映画の中の多くの部分に「韓国人の文化」とポン·ジュノ監督のヒントが盛り込まれているよ。1人では見逃した韓国文化と 隠された意味をペコムと一緒に探そう!
ネタバレがあるけど外国人の場合は前もって読んでから映画を見るのもいいと思うよ!
ギテク家族みんながLGのスマホを使っていた理由
映画は半地下の窓を写し、象徴的なシーンから始まる。
そしてすぐにギウのスマホ画面が映るが、これは2014年上半期に発売された韓国企業LGのG3モデルのものだ。
名場面の一つである、半地下のトイレの中でWi-Fiを探すシーンでも、兄弟そろってLGのスマホを使っている。父・ギテクのスマホもLGだ。
2014年頃が舞台の映画?LGのスマホの宣伝のため?
ほら、韓国のドラマの中でよくある、商品をやたらにアピールするPPL(間接広告)ってやつ?
うーん、違うようだね。友達のミニョクやパク社長の家族のスマホはiPhoneだから!しかも、当時最新モデルのiPhoneX(10)。(2017年下半期発売)
じゃあなんでギテクの家族だけがLGのスマホを使っていたの?
ギテク家族だけがLGの携帯を使う理由は、携帯料金も払うことが出来ず他の家のWi-Fiを探して使わないといけないくらい貧しい暮らしだったから…。
ポンテールとしては初歩的な設定で、ギテク一家は発売から4,5年経ったスマホ、そして、LGのスマホを使っているっていう設定だったから。
サムスン共和国の韓国でのLGのスマホのイメージは…
こんな感じ。(※あくまでも例)
サムスンよりも安い「お手頃スマホ」のイメージだから、「イベントセール用スマホ」、「親孝行スマホ」、「大乱スマホ」なんて呼ばれたりも…
特に、アンドロイド4.4Verを使用している映画の中のG3モデルの場合、色んな作動不良や、ソフトウェアのアップデート中断の問題で大騒ぎになったモデルで、消費者は有償でアフターサービスを受けなければならなかったり、製造会社のOSアップデートのサービスも遅れて、G3の次のモデルのG4も合わせて、少し勢いを取り戻してきたLGのスマホ事業を永遠に下り坂に追い込んだモデルのひとつ…。
1、2年も経ったら普通は0円スマホになるのに、1、2年経ってもアップデートをしてくれないの?(一一”)
もちろん、会社のイメージと一緒に販売量も下降…。
古くなって安いスマホは多いのに、あえてLG、そしてG3モデルを使っている意味を考えると、発売後の製造会社の管理と事後支援が不足しているLGのスマホは、国のお世話と管理を必要とする階層を象徴している絶妙な小道具ではないかと思うんだよね。
ポンテールが本当にそこまで考えているかどうかは分からないけど(笑)
こんな風に、G3モデルをはじめとし、G4、G5と立て続けて失敗し、大きなイメージダウンをしてしまったLGは、その後のイメージ回復のため、たゆまぬ努力をしているけど、簡単に上ることが出来ない私たちの人生の階段のように、深く刻まれたLGのスマホに対するイメージは簡単に変えられず…
毎年、年初にはニュースで、今年は変わった!と言うけど、
毎年、年末にはもっと業績が落ちていき…
LGはとうとう、2021年4月、MC事業本部(モバイル部門)の事業撤収を発表する。
ばいばい、LGのスマホ…(/_;)
韓国のWi-Fi “IPTIME”
ギウのWi-Fi設定画面には、いくつか通信会社のWi-Fiの名前と一緒に、韓国人なら誰でも共感できるくらいの名前が登場する。
その名前は、「IPTIME」(アイピータイム)!
日本でいうと、NECとバッファローを合わせた程のシェア率の企業で 、2012年基準で韓国では80%を占めている企業。
少しずつシェア率は下がってきているものの、韓国で家庭用ルーターといえば「IPTIME」!
そのくらい圧倒的な支持を得ていると考えていいと思う。韓国内で使うには最適化もよくできるし、性能もとても良く、価格も丁度良い!
もし、韓国でルーターを購入しなければならなかったら、IPTIMEの製品の中から価格だけ見て選んでも、少なくとも失敗はしないでしょう!
母チュンスクのパワーはどこから? 全国大会
半地下の家の中で、映画の序盤と水害のシーンで登場する全国大会の銀メダル。
映画の後半部、母チュンスクが力を使うシーンが出てくるからか、よく見ると、1992年の全国体育大会で、母チュンスクがハンマー投げで準優勝した時のものだ。
1920年から始まった韓国の全国体育大会は、2019年に100回目を迎え、毎年、海外同胞を含む各市道別で対抗し、順位を競う韓国の総合スポーツ大会だ。日本での国体にあたるものだよ。
1970-80年代までは、国民にとっても、とても人気がある大会だったけど、今では思い出の中の、当事者だけの大会といった感じ。
「選手たちだけの、選手たちのための大会」…というような…
しかし、男性選手たちの場合は特に、大会の成績が上位の学校への進学や軍隊兵役問題にも関わるため、依然として諦めることが出来ない重要な大会なのだ。
それでも国民にだんだん忘れられつつある大会には変わりなく…
特に、人気がない種目の陸上競技においては、さらに深刻。 学校の体育の授業から日本とは陸上に対する認識が全く異なり、韓国での陸上は人気がない種目の中でも人気がない種目というイメージさえある。
母・チュンスクがよりによって国体のメダリストだったので、雨で水浸した家で一番最初にチュンスクの国体のメダルを守るギテクのシーンは、金メダルではなくても上位圏であった、競争で遅れをとることはなかった頃への、思い出と執着じゃないかと思う。
ギウの学業の成績、キジョンの美術感覚、パク社長夫婦との会話に登場するギテク夫婦の語彙からも、彼らはそれなりに教養もある家族だと思う。
今となっては「無計画が計画」になってしまった人たちだが、最初からそうではなかったはずだから…
ギテク家族が貧しくなかった証拠 消毒車と石
未来の武器のような見た目の「煙霧機械」が、大きなおならのような音を出して通り過ぎると、何がそんなに面白くて一生懸命ついてまわるのか、町中の子どもたちが全員集合だった。
すぐ消える煙の中で、かくれんぼをする子どもたち、目に入るとダメだといって目を閉じて走る子ども、体内の菌を殺そうと口を開けて飲んでいた子どもまで…
インターネットもなかった時代に、おなら車の登場は、それなりにビックイベントだった。
窓を閉めてという案内放送が流れても、「ちょうどいい。家の中も消毒してもらおう」と映画の中のギテクの言葉のように、時には窓を開けておいて室内の消毒もちょっとしてみたりもした。人の考えることってみんな似てるようだ。
主に初夏や真夏に、蚊やハエ、ダニなどの各種害虫を駆除を目的に行われるが、過去に比べ害虫も大幅に減り、ビニールハウスや果樹園が多い農業地域、川、水たまり、森の中などを主に防疫し、都心の場合はゴミ箱の近くや貧困地域などに集中して防疫する傾向に変わった。
しかし、古い住宅が多い庶民地域や“タルドンネ(달동네)”と半地下がある“ビッラチョン(빌라촌)”、“市場地域” などの場所は未だに煙幕消毒が必要な場所だ。
※タルドンネ(달동네):直訳すると月の町。主に山の近くにあって月が近かったり、月の高さ程、高い場所にある貧困地域のこと
※ビラ村(빌라촌):都心の中のアパートと一軒家の間の形態で主に2-5階くらいの多世帯の住宅をビラという。ビラにはほとんど半地下がある。
映画の中で、消毒を不思議に見ているギテク家の姿と、「最近でもあんなことするんだね」というセリフから、彼らも久しぶりに見たという場面なのは分かる。
普通は、夏に1年に1、2回の消毒をするから、ギテクの事業失敗前は消毒車が必要ない地域に住んでいたという意味になるんだ。
少なくとも2回の事業失敗とセリフにあるが、もともと地下に住んでいた人たちではないと推測できる。
”類は友を呼ぶ”
似たもの同士、同じ環境の友達とつるむと言うが、陸軍士官学校出身の将軍のおじいさんがいて、金持ちのミニョク(パクソジュン)がギウの友達である点、“山水鏡石 (산수경석)”を最初から見分けるギテクの眼識、最近の家族の数年間をみても、名門大学のために3浪が許されるギウの状況、キジョンのように美術を専攻した場合のかかる費用を考えてみても、ギテクの家族は裕福な家だったと考えられる。
母のチュンスクだけ「むしろ食べ物を買おう」と不平をいうが、家族みんなが貧乏に苦しみ、品位まで失った姿ではないようだ。
自分たちはまだ半地下だから、地下に住むムングァンとは違うと考えていたのかもしれない。
だからむしろ半分だけさらに登れば、金持ちのパク社長と家族になれると考えていたのかもしれない。距離の感覚が上と下は違うのだ。
韓国人がケンカをする時によく使う言葉 パンマル(タメ口)の意味
均等に分けて食べるため、最も公平な食べ物のひとつであるピザが登場するが、彼らは就職してやっと、町の安物ピザを食べることが出来るのだ。
家族みんなが必死にピザの箱を組み立てますが、ピザ屋の女店長の言葉通り、”4人中1人は不良品を作る“家族で、少なくとも家族4人中1人は不良な人生かもしれない。
その犯人は…写真の家族たちの視線を見る限り…多分…ギテク?と思ったけど、煙霧消毒のシーンのギテクの行動をよく見てみると、ギテクで間違いないようだ。適当に組み立てている(笑)
町のピザ屋の店長は、家族に対しタメ口で話すが、ひときわ若く見えるこの店長のタメ口は、韓国人にとってはとても居心地が悪いけど、甲乙関係(強者・弱者の関係)を考えれば自然と理解出来たりも…。
参考までに…道で知らない人とケンカする時、韓国人が一番よく耳にする言葉は、「너 몇살이야 ! (お前、歳いくつだよ!)」、「어디서 어린 놈이 반말이야? (年下のくせにタメ口かよ)」だ(笑)
通常は「自分の年齢を知ってどうするの」、「それなりに歳取ったわ!」 程度に受け止めるよ(笑)
儒教の国、朝鮮を受け継いだ韓国人にとって長幼有序の精神が未だに根強いけど、今では年齢よりも階級を優先する世界に住んでいるようだ。
こんな風に、彼らだけで、甲(強者)と乙(弱者)を区分し、互いに傷つけあい、熾烈に比較し生きていきているけど、ピザ屋の店長もまた、水害の被害にあう、ただの “下の町” の住民にほかならないのだ。
大雨によりギテク一家が避難所で非難しているシーンをよーく見ると…
後ろにピザ屋の店長(女)の肩をアルバイト(男)が揉んでいる様子が映っているよ!
ヨンギョとキジョンのシーンでは、教養のある姿で敬語を使っていたヨンギョが課外授業の契約確定後は甲乙関係になるので、それとなくタメ口を混ぜて話し、年の若いキジョンも留学派設定だからかタメ口を使う時、韓国人が見守るにはタメ口だけでも緊張するほどハラハラする状況だよ。
この映画のキーワードのように、一線を越えるのではないかと不安な場面。