【パラサイト】#4 北朝鮮と半地下の誕生

映画で学ぶ韓国の歴史・社会

 38度線の意味

 38선 밑으로는 골목까지 훤합니다~

(38線の下は路地も詳しいですよ)

映画「パラサイト」中

パク社長のドライバーとして運転テスト中のギテクが言うこの「38線」とは、地図の北緯38度線を言いますが、休戦線の下の全部、つまり南韓(韓国)全体を表す表現です。

アメリカとソ連の便宜によって南と北に分けられたこのラインは、朝鮮戦争時、北朝鮮は西側から南側に攻めてきて、韓国は東側から北側にさらに上がった状態で休戦となり、今は正確な38度線が基準ではないため、「군사분계선(軍事分界線)」と呼びます。

38度線の時代も同じですが、今の軍事分界線はまた、地図上の表示であり、実際に地面にラインが引かれているわけではありません。

しかし、便宜上、板門店の境界線や、ソウルとピョンヤンを結ぶ道路の地点では区分されています。

普通、一般の方が想像する国境線を意味する鉄柵は、軍事分界線から2㎞離れたところに2重3重にも高い鉄柵を軍人たちが守っています。

南北の中間地域を「非武装地帯(DMZ)」と呼びます。

くっついていたらお互いケンカになるからちょっと離れておこうということでしょう。

2000年代初期に入隊した俳優のウォンビンは、膝の怪我で予定よりも早く除隊したことがありました。その時にウォンビンがいたところがDMZで、まさにこんなところです。

昼夜何回も行ったり来たり巡回をしなくてはいけないところ。

軍隊に行ったことがある韓国の男性は、芸能人の軍生活に対して厳しいですが、ウォンビンが膝を痛めた時は「そこはそれくらいなる」、「もともと膝をよく痛める程の場所」と納得する程、とてもきついことで有名な場所だったので、みんなウォンビンの早期除隊を認めるくらいでした。

ギテクはパク社長と同伴者を夢見ますが、パク社長にとってギテクはただの「テストドライバー」にすぎない存在。

統一を待ち焦がれ夢見る韓国と、ミサイルをプレゼントしてくる北朝鮮の関係が思い浮かんで、何だか切ないですね…。

ペコム
ペコム

서로 선을 넘지 말아야 합니다.(お互い線を超えないようにしないといけません) 

半地下の誕生と北朝鮮

映画のキーポイントである「半地下」

「おもしろい」から「不思議だ」まで色んな反応があります。

韓国と北朝鮮、「一二一事件」

韓国の半地下の構造について話す前に、韓国映画「シルミド」(2003)の話を先にしようと思います。

1968年1月21日の夜…

31名の北朝鮮の特殊部隊の要員たちが韓国に浸透します。

目標はソウル、そして「青瓦台」

ソウル市内侵入に成功し、青瓦台のすぐ後ろの町まで侵入した彼らは

警察の検問にひっかかり、熾烈な銃撃戦を繰り広げます。

約2週間の追撃戦の終わりに1人は逮捕、1人は逃走、残りは射殺。

そうやって終わりを迎えた事件で唯一生き残った北朝鮮のスパイ「金新朝(キムシンジョ)」

朴正熙(パクジョンヒ)大統領を狙った事件を復讐するために、北朝鮮の金日成(キムイルソン)に韓国の特殊部隊のストーリーが「シルミド」です。 

おはる
おはる

この映画は実話を元にしたもので、韓国で初めて映画動員1,000万人を達成した映画でもあります。

青瓦台のすぐ前まで突破したとんでもない事件だったので、南北間は戦争直前の雰囲気でした。

おはる
おはる

詳しくは「一二一事件(1·21사태)」で調べてね♪

今も韓国の男性はその時にできた予備軍制度によって、除隊後も8年間毎年1回以上訓練を受けなければならず、(実際は4年くらい)40歳までは民防衛に所属し、1年に1回出なければいけません。

前線は軍人たちが、町は予備軍が守ろう

ペコム
ペコム

軍隊までは我慢できますが…

本当にめんどくさい制度を作った悪い奴…キムシンジョ..(T_T)

私が小さい時は「おい!キムシンジョみたいな奴!」はよく使われる悪口でした。

地下室の設置の義務化

こんな南北の超緊張状態から、1970年代始めに改定された建築法により(70,72)、一定用途と規模以上の建物の場合、地下層の建設が義務化されました。

ソウルの中心(青瓦台のあたり)で起きた銃撃戦は戦場の区分と概念を変えてしまい、いつでも避難できるように「防空壕」の役割、どこでも戦闘できるように「バンカー(bunker)」の概念として地下室が義務化されました。

しかし、経済の成り行きが苦しかった当時、地下室の設置に伴う建設費上昇と建設期間の負担を減らすため、個人の住宅の場合、緩和された基準に限られるようになり、「半地下」が誕生したわけです。

地下でもなく、地上でもない「半地下」

地面を少しでも掘らなくてすむなら、費用も期間も短縮できます。

そうやって誕生した半地下は戦時の備えですが、普段は倉庫としての意味合いが強く、韓国経済が成長し、産業化されるにつれ、国民は少しずつソウルに集中し始め…

北朝鮮の存在も薄くなり、家は不足してきました。

半分が地下だった倉庫は存在が曖昧になり…

半分でも光を見ることができる「半地上」は、住居としてもそれなりに使えました。

こんな事例が爆発的に拡散して1984年、政府は建築法を改訂し、より緩和された規定を出し、庶民たちの住宅不足の現状を解決しようとしました。

지하에 3분의 2는 들어가야 지하지~에서

地下の部分が2/3はないと地下じゃないでしょ~から

지하에 2분의 1만 들어가도 지하야~라고…

地下の部分が1/2でも地下ですよ~と…

そうして現在の「半地下文化」は定着したんです。

半地下の問題とは?

おはる
おはる

余っていた空間が賃貸となり、家主にとっても良いし、

半地下を理由に安く利用できる入居者たちにとっても良いし、良かったね!

…っていう訳ではなくて…安いものには全部理由があるのだよ…

日当たりプライバシーの侵害は基本的な問題で、一番深刻なのは湿気カビによる環境と衛生問題。

水害問題犯罪にさらされる環境など色々なデメリットがあります。

通り過ぎる猫ちゃんも、ワンちゃんも、こんな私の人生を見下ろすけど、

でもまだ、半分は地上じゃないですか。

불우이웃끼리 이러지 말자 (恵まれない者同士、こんなことはやめよう)

映画「パラサイト」中

と言う”地下”のムングァンに

난 불우이웃 아니야(私は恵まれない人じゃない)

映画「パラサイト」中

と言う”半地下”のチュンスクのように

半地下は違っていなければならないんです。差がないといけないんです。

そうすれば少しでも夢と希望を持てるでしょうㅠㅠ?

今は全てのことを諦めて、原始的な生活を送っているクンセも、壁に張ってある婚姻届けのようにラブラブを夢見ていた幸せな夫婦だったし、本棚にある法律書籍を読んで、警察を夢見ていたし、地上に出てきて音楽に合わせて踊って希望の時間があったじゃないですか?

それに努力してないわけじゃないだろうに、その全てが失敗して地下に入って「リスペクト」と叫んでいるのは、失敗していない人に対する「心からの尊敬」であるのかもしれません。

北朝鮮に備えた建築家の防空壕のおかげで地下でも暮らせるムングァン夫婦は多分、ひょっとすると、

心からパク社長を尊敬し、北朝鮮に感謝していたかもしれません。

政府からも捨てられた彼らに与えられた唯一のチャンスだからです。

“북한 덕분에 이렇게 살게 되었네~고마운 북한 놈들~(北朝鮮のおかげでこんなに暮らせるね~ありがたい北朝鮮の奴ら~)”

こんな感じで北朝鮮の話をし、北朝鮮のアナウンサーのものまねもよくしてたんじゃないかな?

過去の彼らの生活をちょっと想像してみました。

おはる
おはる

ちなみに…グンセ役のパク・ミョンフンさんは映画のトップシークレット的な役割だった為、秘密保持契約を結び、撮影級は家族とも距離を置き、役作りで8キロの減量や実際に地下室に1ヶ月生活するなどして、映画の撮影に臨んだそう!!

半地下の歴史は、韓国の歴史と現実を映し出しているもう一つの鏡です。

北朝鮮と経済成長、ソウル集中の現状と両極化問題

ロマンという名前で包まれた「屋根裏部屋」流行まで… 

おはる
おはる

たしかに

屋根裏部屋や屋上に部屋があるタイプの家は韓国ドラマで良く見る!

ソウル基準の地上対比平均3-40%以下、地方基準おおよそ20%以下の地下と屋根裏部屋の安い賃貸料は、2015年基準で全体の戸数の2%程度が、未だに地下と半地下に居住している数値。

しかし30歳以下の青年の場合、おおよそ4%の2倍の数値。

全体の戸数の住居貧困率は1/3に減りましたが、同じ期間で青年の住居貧困率はむしろ増加している数値をたたきだしました。

「青年」と「浪漫」、「思い出」という単語で包まれてきたこの文化は、2003年、不足している駐車場確保のために、また法律が変わり、今では思い出の中に消えています。

1階の駐車場の上に建物を建てるピロティー構造が増えてきて、地下の構造が消えつつありますが、最近は地震の耐震問題のため、またどのような構造の変更が行われるのか気になります。

もちろん、自嘲的な単語だったでしょうが、社会的弱者に対してロマンと思い出がなすすべなく「強要」される社会よりは、本当のロマンと思い出を自ら「選択」可能な環境になることを願います。

半地下住宅のトイレの位置

雷と一緒にチャイムがなり、雨は一晩中降り続けます。

親戚の家を夢見る程近いと思ったけど、家に向かう下りの階段は終わりもなく続きます。

明るい空を見下ろすパク社長の家から降り始めた雨は

もうこれ以上行き場もなくギテクの家に逆流します。

ムングァンは便器に血を吐き、キジョンは便器を塞ぎタバコを吸っています。

天井の蛍光灯は、クンセのSOSのようにチカチカしますが、誰も助けてはくれません。

これ以上のどん底はないようにと思っていましたが、雨水さえも逆流する場所、

その逆流していたトイレについての話です。

2人の兄弟がWi-Fiを探し、キジョンがタバコを吸っていたトイレの構造は、仕方なく、必ずそうしなければならない構造でした。

半地下の出発から完全な地下ではなかったし、用途も倉庫や待避所の概念だったので、居住のための設計が適用されたなった場所が多いです。 

地上層の汚水を吐き出すための保存タンクの位置が、普通はそんなに深くないところに配置されているからです。

また、保存タンクの管理と掃除のために、上段部は蓋で繋がっている場合が多いので、むやみに深く配置されず、そういう理由もありません。

掘る費用と配管の連結工事の費用だけがかさむからです。

まさにその理由で、深くても地下1階くらいの深さに埋められた保存タンクは、半地下・地下の住居空間の地面の下に同じような高さで位置することになります。もちろん水を流してみればもっと理解し易いと思います。

便器と保存タンクまでの配管連結が水平になってはダメだからです。

それでも便器の位置が保存タンクよりも高くて配管にそって下を通ることができたら、想像の中の最悪の状態は起こらないはずです。

公園や山などの屋外でみかけるほとんどの簡易トイレは、階段を上がって利用しなければならない理由も同じです。高くないといけないからです。

映画のように便器の部分だけ高くなっている場合が多く、最初から浴室の床の部分全体の高さを出している場合もあります。

普通はすでに使われていた倉庫の空間を改装して始まった文化なので、水道や電気施設もまた劣悪です。すでに完成している設計案で最小の費用で抑えなければいけないので、既存の設備と連携がし易かったり、近いところに配置をするようになります。

水道やガスの連結が必要な台所やトイレが、特に多く制約を受けることになり、全然違うところにある、形からしてとっても変な台所とお風呂をよく見ます。

もちろん、こんな変わった配置や形、構造などは韓国でも「へぇーこんな構造の家があるんだって~」の対象になります。稀です。

長方形の構造のトイレで用を足してドアがいきなり空いた時、ドアを締めることができません。

便器が高い位置にある友達の家で用を足してトイレットペーパーが下の壁に固定されているのを見つけた時、しゃがんだ姿勢で階段を下りるには本当に地獄です。

ペコム
ペコム

はい、どちらも私の体験です(笑)

すでにトイレの天井に頭がつきそうでかがめていたら足まで痺れてきて、痺れた足を引きずってヨチヨチ階段を下りるのは、軍隊の遊撃訓練よりもぞっとした記憶です。それからというもの、私はその構造がとっても嫌いです。全~~~~~~然人間に配慮されてない設計です。

幸運なことにその友達は地上に引っ越しましたが、半地下は色々と大変な空間ということは確かです。

辛うじてある窓が、前の建物で遮られたり、他の建物で光が入ってこない場合、飛行機に乗らず北半球の白夜と同じ経験をすることが出来ます。

今が昼なのか夜なのかも分からない

真昼間にも蛍光灯を付けなくちゃいけない生活を経験します。

窓の外の通行人、安全問題、車の排気ガスや動物たちの訪問よりも一番ひどいのが、絶対に湿気とカビです。

玄関と連結されたお風呂も、台所と一緒のトイレも、安い家賃で我慢できるかもしれないけど、365日、地下に漂っている湿気とカビは人間のレベルではありません。

健康のためにも避けなければなりません。

その湿気とカビによるのが

まさに映画で強調されていた「そのにおい」じゃないかと思います。

1980-90年代に急増し、古くなった半地下の住宅は建て直しと一緒にその多くがなくなり、今では現代化されましたが、「そのにおい」は未だに..。

いくら窓を開けても、オシャレなインテリアにしても、現代の除湿器もお手上げの構造の限界として残り、未だに私たちが克服しないといけない壁として残っています。

おまけエピソード*「私の部屋のリビング」?!

何年か前に韓国で、有名な芸能人の娘がSNSに上げた

내 방 거실(私の部屋のリビング)” という言葉が話題になりました。

“내 방이면 내 방이고, 거실이면 거실이지, 내 방에 거실이라니?(私の部屋だったら、私の部屋で、リビングだったらリビングでしょ?私の部屋の~リビングだって?)”

“이건 또 무슨 새로운 한글 파괴냐?(何これ?新造語?)”

愚かで節度がない娘として評価を受けた彼女の言葉は、調べてみると彼女は約100億ウォン台の大豪邸に住んでいて、地下2階から地上4階まである彼女の家には、一般人の家の大きさほどあるリビングが何部屋もあって、メインのリビング以外でも部屋ごとにリビングがありました。

実際に「私の部屋の中のリビング」が別にあったという彼女たちだけの世界とスケールを知らされた伝説の新造語事件は、地下の人たちをあまり知らないダソンだけがギテク家族から漂う共通的な匂いを探すように、

금수저(金のスプーン)“と呼ばれる彼女たちとの格差はさらに広がり、今では「対話」と「疎通」さえできなくなった庶民たちだけの現実を見せられたようでした。

地下も、地上も、彼らだけの「違う意味」の単語というだけです…。

※금수저(金のスプーン):裕福な家に生まれた人のことを韓国では「金のスプーン」という。

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