この映画、面白いけどそんなにもすごいの?映画祭の受賞って何がすごくてそんなに騒いでいるの?って思っている人は多いと思う。
アカデミー作品賞受賞がどんな意味があるのか簡単に調べてみたよ!
※ネタバレはないので安心してね!
レベルA アカデミー受賞の隠れた意味 主要映画祭の情報
4大主要映画祭と大賞の名前
一般的に、商業性をより重視するアカデミー授賞式と芸術性を重視するヨーロッパ3大映画祭を「世界4大映画祭」と呼ぶが、大賞(作品賞)の名前で呼ばれることもある。
ヨーロッパ3大映画祭の傾向と簡単な情報
アカデミー授賞式は普通、私たちが知っているハリウッド映画が多く受賞しているからよく知られているが、ヨーロッパ映画祭の場合は、芸術性に重点を置いているのであまり知られていない映画が多い。
そのため、広報のために映画ポスターに映画祭のロゴや受賞記録を表記するから、それぞれの映画祭の傾向を知っておけば、映画を選ぶ時に少し楽になるかもしれない。
個人的にはカンヌ映画祭 > ベネツィア国際映画祭 > ベルリン映画祭の順で難しくて重い映画が受賞する感じだ。
アカデミー作品賞の受賞がすごい本当の理由 1インチ字幕の秘密
さきほどお話しした、ヨーロッパとアメリカ映画祭の傾向の違いを表現すると、芸術性と作家主義を重視するヨーロッパ、面白さと社会的意味を重視するアメリカだが、実は両方とも満たしている映画は多くない。
1955年のカンヌ映画祭とアカデミー賞で同時に作品賞を受賞した最初の映画『マーティ(Marty)』以来64年間、1本もなかったのだ。64年ぶりの同時受賞。
これだけでも世界の映画史に大きな快挙だが、韓国映画界はもちろん、アジアやヨーロッパの映画界まで大騒ぎになった本当の理由は『パラサイト』が “韓国映画” だったからだ。
正確に言えば、”韓国語“で作られた映画だったから。
韓国の映画だったら、当然、韓国語の映画じゃないの?何が違うの?
アカデミー授賞式の “伝統” ってものがあるんだけど、今から説明するね。
これはどういう意味かというと、既に台湾の映画『グリーン・デスティニー(2000)』と日本の『おくりびと(2008)』、イランの映画までもアカデミー賞を受賞しているが、全て “外国語映画賞” 部門だ。
ヨーロッパの映画祭では、他国の映画に関して寛大で受賞作も多かった。 しかし、これまでのアカデミー授賞式は非常に保守的で、他国の映画、特に「非英語圏」の映画は受賞したことがなかった。せめて一応作った賞が外国語映画賞なんだよね。
これをあげるから、 食べて落ちて~こういう感じなんだ。 英語でなければ賞をあげたくないという意味。
英語で作られた映画にだけ与える特権っていうか、 外国語で作られた映画は最初から分離して考えてきたんだよ。
1929年の第1回授賞式以来100年近く続いてきた、アカデミー賞ならではの不思議な伝統と権威意識。その不思議な伝統が、今回 “初めて” 打ち砕かれたんだ。
外国語映画賞ではなく作品賞。 英語でない映画としては最初の記録。
90年間1回もなかったってこと?
ヨーロッパ映画も有名じゃない?
英語以外の言語!フランス語もドイツ語も両方ないよ。これまでの作品賞は、全部100%英語映画!(笑)
アカデミー授賞式のこのような差別的な姿に対して、世界の映画界がこれまで多くの批判をしてきた。日本にもヨーロッパにも中東にも『パラサイト』ほどいい映画がたくさんあったからね。
授賞式の数ヵ月前、ポンジュンノ監督のインタビューが世界中の映画人にとって大きな話題となった。
カンヌ、ベルリン、ベネツィアは国際映画祭だが、アカデミーは地域映画祭ではないか。
ポンジュノ監督インタビューより
英語映画だけを授賞するアカデミー映画祭を批判するポンジュンノ式冗談の意味を、映画人たちは知っていたのだ。 特にアメリカの映画人の間でも、改革が必要と訴える進歩派と、これが今までの伝統だという保守派の主張を巡り、とてつもなくリツイートされたインタビューだった。
もちろん、やみくもに変な伝統と権威意識のせいというのは難しい部分もある。ノーベル文学賞受賞が難しいように、他の言語の作品は “翻訳” を経なければならないが、この翻訳の問題と文化の差で、本来の意図や感性の伝達がまともに行われない場合が多いからだ。
特に、すでにハリウッドという自国の「英語映画システム」に慣れているアメリカ人の場合、“字幕” が必要な映画は最初から見ないほどだという。 古い習慣によって、字幕を読む行為自体が集中を妨げる要素になってしまったのだ。
これがアメリカのゴールデングローブ授賞式で「外国語映画賞」を受賞したポンジュノ監督の受賞の感想が再び話題になった理由だ。
たった1インチ大の字幕という高い壁を超えると、より多くの映画が楽しめます。
ゴールデングローブ授賞式 ポンジュノ監督インタビュー
私たちはひとつの言語を使うと思います。 その言語は映画です。
韓国の映画監督ではなく、1人の「映画人」として映画を愛し、広めようとする彼の気持ちがよく伝わった感想だった。
非英語映画の最初の作品賞という結果も意味があるが、ポンジュノ監督の映画に対する愛情と努力を知っていたからこそ、多くの映画人が心のこもったお祝いをしてくれたのではないかと思う。
1インチの字幕、ひとつの言語、かっこいいセリフ~!
最初は、ただ面白いだけだったこの映画を観返したら、見逃していた部分が多いんだ。翻訳と文化の違いで見逃してしまうには、とてももったいない映画だったから映画の解説レビューを準備したよ。
レベルB:『パラサイト』の受賞はすでに予告されていた
映画祭にも流行がある!映画祭受賞作の比較
疎外と貧困、福祉はすでに時代の流れだった。 私たちが知らなかった最近の映画祭受賞作たちの共通したキーワードは “貧富の格差”。それくらい暮らすのが大変な時代だという証拠だろう。
貧富格差という社会的意味を込めながらも、楽しさとメッセージ性を逃さないようにし、 “コミック残酷劇” という新しいジャンルを作り上げたポンジュノ監督のように、映画はその時代像を映し出し、審査員はその流れを反映して授賞しているので『パラサイト』の受賞は、すでに予告されていたと思う。
同じテーマを、監督たちだけの色彩と言語で表現した他の映画を比べてみるのも面白いと思って、おすすめ映画を集めてみたよ。
受賞作だけ集めたのに、似たようなテーマの映画が多いね!
『万引き家族』(2018)
公開は『パラサイト』よりも先だったけど、『パラサイト』を軽く脚色したテレビドラマ感覚で気軽に見ることができる。似たような文化と背景を持つ東洋人には馴染み深い部分が多いからだ。
ストーリーの進行過程が穏やかで、簡単なパズルを 合わせるような感じなので、もっと深みのある何かを望む人たちには少し物足りないかと思う。
『パラサイト』とも一番似ていると同時に、一番違う感じを受ける映画。
俳優さんたちの演技が、本当に上手だったっていう印象!
『わたしは、ダニエル・ブレイク』(2016)
すでに2016年には、 “パラサイト(寄生虫)” はいた。
社会福祉先進国というイギリスの実体を示す欧州版 “パラサイト(寄生虫)”。
おじいさんが主人公なので面白くないように思えたが、パルムドールのマークを信じて鑑賞した映画だ。胸がつまるような感じがするが、だからといって複雑ではなく、あっさりした、何か重い余韻が残る元祖グルメの出汁のような感じ。見ているとそれなりに可愛いおじいさん。
公務員たちの形式的な仕事ぶりを見て、コロナ禍の今、日本でも同じようなことがもっと増えているんじゃないかと思った。
どの国でも公務員はクレームを言われやすい。もちろん映画の中の公務員たちは、言われてもしょうがない…。
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017)
夢と希望の国、アメリカのディズニーランドの建設計画の名前 “フロリダ・プロジェクト”。そしてまた、無住宅者補助金支援事業の名称も “フロリダ・プロジェクト”。
カラフルなフロリダの彼らの環境とはかけ離れた、悲惨な現実の中で生きなければならない無邪気で純粋な子どもたち。その子どもたちのあまりにも大人びた姿に胸が痛む映画。
世話を受けるべき捨てられた人たちの童話のような話だ。主人公 “悪口屋ムーニー” のキュートで、ハツラツ、そして悲しい演技を一緒に応援したいなら、ぜひ!
ムーニーのおかげなのか、貧しい人の話だけど映画の色使いも鮮やかで観ていて飽きなかった!
『ノマドランド』(2020)
これこそ!アメリカ版の『パラサイト』。
経済不況で行き場を失ったアメリカ人たちの遊牧生活の話。各種授賞式を総なめし、2021年のアカデミーの作品賞の受賞作。
実話を基に、静かで穏やかに人生を淡々と見せてくれる映画。“ヨーロー族”や、“キャンプ” が流行りの昨今、“ノマド(流浪族)”になってしまった人たちをみていると、色々考えてしまって、自分も彼らと一緒に旅をしているような気持ちにも。富の国アメリカの人たちも同じように大変なんだと思ったり。
焚火を囲んで、静かに人の話を聞くのが好きな人にはオススメ!ドキュメンタリー調なので、映画の壮大さや楽しい音楽、逆転ストーリーなんていうのはないので、映画を観てすぐ眠くなる人にはちょっと無理かも(笑)
観たいけど、まだ心の準備が‥‥
そこまでではないけど、横になって観るなら注意してね!(笑)
主要映画祭だけ見ても、本当に大流行と言えるほど、大陸ごとに、国ごとに似た映画があったのだ。 映画祭受賞作だからといって、すべて良い映画というわけではないので、受賞そのものに対する意味よりは、ポンジュノ監督が新しく作り上げた道の意味がもっと大きいと思う。
“ 映画は私たちが使う一つの言語だ ”