最近韓国で一番の話題作はディズニープラスのドラマ『ムービング』(2023)だよ! この作品を見ていると “南山トンカツ” がとてもよく登場して空腹に耐えられない(笑)今日は日韓とんかつの違いと韓国のとんかつ文化について紹介したいと思うよ!
韓国ドラマや映画にトンカツがよく登場する理由には、韓国ならではの文化が込められているけど、この記事はドラマ『ムービング』を参照して読むともっといいよ~!
韓国式トンカツ
韓国男子3大ソウルフード
皆さんもよくご存知のように、“トンカツ” は豚肉を切った後、衣をつけて揚げる日本式カツ料理のこと。
日本式西洋料理のカレーライス、コロッケと共に韓国でも好んで食べる日本から流入した食べ物だ。
トンカツは特に韓国の子どもたちに愛されている食べ物の一つで、過去には誕生日パーティーの時に一番食べたかった食べ物の第1位だったほど。
ハングルの綴りでトン(돈)カ(가)ツ(스)が標準語だということを今日知ったほど、韓国人はトン(돈)カ(까)ツ(스)で主に使うが、自分だけが間違って使っていたのかと思ってグーグル検索量もまた調べてみた(笑)
ジャージャー麺(자장면/짜장면)のように両方とも許容しているか探してみたが、ネイバー辞書と国立国語院の両方ともドン(돈)カ(가)ツ(스)だけが標準語だそうだㅠㅠ
最近の子どもたちにとってトンカツは、ピザやハンバーガーに押されて最上位圏の人気ではないようだが、少なくとも韓国の成人男性には “3大ソウルフード” と呼ばれるほど愛されている食べ物だ。
豚肉炒め(제육볶음)とトンカツ、そしていろんなクッパ類。
この中で豚肉炒めとトンカツを2大ライバルと呼ぶほどで、韓国女性のトッポッキとタッパル(鶏足)のような存在だと思ってよい。
だから、日本のチェーン店の松屋や吉野家に牛丼があるように、ほとんどの韓国の食堂には豚肉炒めとトンカツのメニューがあり、韓国で一番ありふれた粉食店の “キンパ天国(김밥천국)” のようなところには、最初から2つの料理がセットになっているスペシャルメニューも非常によくある。
学生の時、高くてしょっちゅう食べられなかった “キンパ天国スペシャルセット” をお金の心配なく食べたら、やっと大人になった!と言うくらい(笑) 普通1万ウォン前半の値段だよ(笑)
韓国式トンカツの違い(日韓のトンカツ比較)
それでは日本と韓国のトンカツはどう違うのか調べてみよう。
まず名称を日本ではトンカツを大きくヒレカツとロースカツに区分しているが、韓国ではほとんどそのまま “トンカツ”と統一して呼んでいる。
韓国で一般的に言うトンカツは日本のロースカツの種類を呼ぶ表現だが、その形と大きさが日本とは非常に違って肉の厚さが薄く大きい。
別名 “王(왕)トンカツ” とも呼ばれるスタイルが、韓国人が考えるトンカツの基本的な姿だ。だから日本とは違って肉が切られてなく、自分で切って食べられるようにナイフとフォークが一緒に出てくることがほとんど。
豚ロースを肉ハンマーで叩いて広く薄く伸ばしているので、早く揚げることができるというメリットがあるそう。これが長所かどうかは分からないけど(笑)
大きさと形より日韓トンカツの最大の違いはソースだ。
日本はウースターソースがベースで、デミグラスソースを混ぜることもあるが、韓国式トンカツはほとんどデミグラスソースをベースにしていて、ソースの粘度や甘さが日本式に比べると非常に薄い方だ。
だからソースにつけて食べる日本と違って、韓国では肉の上にソースがたっぷりかかっていても、辛かったり味が濃くない。
日本式は付けて食べるスタイルなら、韓国はかけて食べるスタイルだ。
韓国料理界の最大の論争は中華料理 “タンスユクッ(酢豚)のソースをつけて食べるかかけて食べるか” だけど、トンカツは議論なくほとんどかけて食べているよ(笑)
メインの肉の他に添えるメニューでも違いがあるが、日本は千切りキャベツサラダと味噌汁、そして茶碗に盛られるご飯が出てくるとしたら、韓国は煮た野菜やキャベツサラダを基本に、マカロニサラダが追加されるところが多く、キムチやたくあんが一緒に出てくるのがポイント。
ほとんどはキムチとたくあん両方出てくるが、どちらか1つだけ出てくるところもあったり、キムチは白菜キムチよりは大根のカクテキキムチが出てくるところを定番としている。
ご飯はトンカツの皿の上に丸いおにぎりや、別の皿に薄く広げて出てくるが、ご飯の量が日本の量より少ない。
ナイフとフォークを使う “西洋料理” の概念として認識しているので、ご飯が多いとちょっとダサい感じがするからじゃないかと思う。それでもキムチが必須だというのが面白いけど(笑)
トンカツは西洋料理? 東洋料理?
さらに韓国では味噌汁ではなく西洋風のクリームスープが出てこそ定番とされている。
まさにこの部分で韓国と日本の最大の違いが生じるが、トンカツの材料や形、ソースが問題ではなく、“認識の違い” だ。
韓国も食事にはスープを必須要素と考え、日本のように味噌汁の代わりに味噌汁(テンジャンクッ)を食べても十分だが、クリームスープを基本に考えている理由がトンカツを “西洋料理” と考えているからだ。
最近は韓国式の味噌汁やおでんのスープ、あるいは日本式の味噌汁を提供しているところが多いけど、韓国人はトンカツにはクリームスープが定番と思っているよ!(笑)
トンカツはもともとイタリア料理のコトレタ(cotolette)がフランスを経てイギリスに伝わりカツ(cutlet)となり、この料理が19世紀西洋と密接に交流していた日本に上陸、日本人の好みに合わせて現地化されたのがトンカツの始まりだという。
実は元祖ヨーロッパではカツを豚肉にすることは珍しく、“ポークカツ” と別に区分するという。
肉にパン粉をつけて揚げたという点で味は似ているが、料理法と味ともに同じ料理と見るのは難しいという専門家たちの意見。
しかし “トンカツ” という名称から、ほとんどの韓国人は日本から流入した食べ物だということをはっきり認知していて、その歴史的由来が事実であるにもかかわらず、カレーや寿司のような日本から流入した食べ物とは違ってトンカツは日韓の違いが大きく違うのだ。
日本から流入した食べ物であるにもかかわらず、韓国式トンカツは日本よりはむしろオーストリアとドイツのシュニッツェル(Schnitzel)という食べ物とよく似ていて、反日感情が激しい時期には韓国のトンカツは「日本ではなくヨーロッパから伝わった食べ物だ!」と主張する人もいた(笑)
日本が元祖だということは無条件否定したかったからだろうが、シュニチェルとは全然関係がないという(笑)
日韓トンカツの違いはむしろ、貧しくて食べるものが不足していた韓国の経済と時代像が反映されたと見るのが妥当に見える。
肉が厚いと肉の量も多く必要で、油もたくさん使い、調理時間も長くなるので、より作りやすく、油は節約しながら肉が多く見える方式に変化したと見るのだ。
肉を薄く広げて大皿に盛り付けるとボリュームたっぷりに見える効果があるから。そこにご飯とキムチを追加して韓国人の口に合わせることができる。
ジャージャー麺のおかずとして好んで食べていたたくあんも加わり、韓国式トンカツの完成。
軽洋食とレストラン
それでもスープはクリームスープにこだわるほど、トンカツを西洋料理として認識するのもまた韓国の文化や歴史に込められた時代的背景が込められていると思う。
それを象徴する単語がまさに “軽洋食(경양식)” だ。
辞書上の意味は漢字の単語そのまま “簡単な西洋料理” だが、韓国では軽洋食といえばトンカツと軽洋食を呼ぶ韓国式英語名称のレストラン(restaurant)を思い浮かべる。
箸で食べるように自然に日常の食べ物に同化した日本とは違って、韓国では経済的な問題によって特別で高級な外国料理として存在するため、むしろナイフやフォーク、クリームスープのような西洋的要素を強調してきた。
普段食ではなく特別食として存在した期間が長すぎたんだよTT
韓国にトンカツが本格的に流入したのは、日本植民地時代の1925年、韓国初の軽洋食屋 “グリル(그릴)” という食堂がソウル駅駅舎内に開業してからだそうだ。
代表メニューのトンカツは当時、大韓帝国の人には非常に高い値段だったので、主なお客さんは韓国在住の日本人と西洋人で、当然ながら韓国人には高級料理というイメージが強く残るしかなかった。
太平洋戦争のための日本の収奪によって、韓国は世界中のどの国よりも貧しくなり、光復後(終戦後)には朝鮮戦争によって全てが廃墟と化し、状況はさらに悪化した。
ご飯1食でも食べられるか生存を心配しなければならなかった時期で、軽洋食は夢にも見られないㅠㅠ
1953年の挑戦戦争は終わったが、ほぼ半世紀にわたる廃墟と窮乏によって韓国は1950年代はもちろん、1960年代までもご飯を食べられず飢え死にする人が続出した時期だ。
当時、韓国に駐屯していた在韓米軍や国連軍の生ゴミをざっと洗って作ったお粥が唯一の特食で、名前が “UNタン(UN탕)” あるいは豚が食べる生ゴミと形が似ていて“クルクリ粥(꿀꿀이 죽)” だった。(クルクリ(꿀꿀이)=豚の鳴き声ハングル表現)
プデチゲ(부대찌개)の始まりも在韓米軍の食材なので2つの食べ物を混同する場合が多いが、プデチゲは普通の食材で作った料理なら、クルクリ粥は残飯で作った料理だよㅠㅠ
生ゴミで作った食べ物でも並んで配給を受けなければならなかった祖国の現実を変えるために、軍人パク·ジョンヒは1961年に軍事クーデターを起こしたが、彼の夢は実現しなかった。
映画『南山の部長たち』の記事(リンク)で紹介した1960年代初め、朝鮮半島の大飢饉と大凶作によって韓国の酒には米の使用が禁止され、まずい韓国酒の原因となり、1969年からは不足した米の代わりに援助を受けた小麦の消費を促進するための混粉食運動を実施しなければならなかったから。
そして米の使用量を減らすための厳しい取り締まりによって、今韓国の食堂で使われているステンレス茶碗の誕生とジャージャー麺の流行の始まりを学んだ。
安い小麦粉で作ったジャージャー麺でさえ、1970年代になって流行が始まったので、肉で作ったトンカツは相変わらず超高級料理だった。
ジャージャー麺の記事(リンク)で、誕生日や入学式、卒業式のような記念日に食べる特別外食だったジャージャー麺が韓国人に与える思い出や意味について説明したが、トンカツの場合は超上流層でない以上、さらに近づきがたい食べ物だったのだ。
韓国経済が本格的な成長軌道に乗った1980年代に入ってようやく“トンカツ” という食べ物が一般的になり始めたが、価格は依然として高くて本当に特別な場合にだけ食べるスペシャルメニューだった。
この時期、韓国人が食べられる西洋式がトンカツで、軽洋食を販売する高級飲食店を英語 “レストラン” と呼んでいたので、韓国人にはトンカツ=軽洋食=レストランのような認識が脳裏に刻まれているのだ(笑)
トンカツとお見合い、そして南山
それで1980~90年代を背景とする韓国ドラマや映画で、家族が特別な外食をする時はレストランのシーンがよく登場する。1970~80年代のジャージャー麺と似たような位置なのだ。
ドラマ『応答せよ1988』を見ると、出演者5人家族の中で一番金持ちだったジョンファンの家族がレストランでトンカツを食べる場面が出てくるのも、考証がよくできた現実の反映ㅠㅠ
軽洋食屋やレストランと呼ばれていた当時の西洋料理店は、主に高級で古風なインテリアとして人気だったため、合コンや恋人とのデートシーンでもよく出てくる。
今の基準ではとてもダサいが、当時は大人気だったと!(笑)
そのおかげで今の既成世代には レストラン=トンカツ→お見合い という変な固定観念も残っているわけだし、恋人たちが楽しめるものが多くなかった当時、ソウルで安く楽しめる主なデートコースだった明洞(ミョンドン)と南山(ナムサン)が、“南山トンカツ” までもつながるのだ(笑)
明洞ショッピングモールを見物した後、トンカツを食べて南山ケーブルカーに乗って散歩しながら降りてくると1級コース(笑)
ドラマ『ムービング』の中でも、チョ·インソンとハン·ヒョジュが南山デートを楽しむ場面が出てくるが、ハンサムで綺麗な人たちはやっぱりデートコースも上手く選ぶ(笑)
もちろん、現在ソウル南山にある数多くの南山トンカツレストランの人気にはもう一つの理由もあるが、上記のような公式が出発点になったのは事実だ。
今日は日本式よりも薄く大きい韓国式のトンカツについて話したが、次はもっと大きくて量の多いトンカツの “王トンカツ” のお店がどうしてソウル南山に集まって “南山トンカツ” になったのか、詳しい解説でまた戻ってくるよ。
最近は外国人にも人気の南山トンカツの元祖を探して、coming soon!