この記事は映画『パラサイト 半地下の家族』解説③(リンク)の補足記事だよ。
都市を消毒しよう
未来の武器のような見た目の “煙霧機械” が、大きなおならのような音を出して通り過ぎると、何がそんなに面白くて一生懸命ついてまわるのか、町中の子どもたちが全員集合だった。
すぐ消える煙の中で、かくれんぼをする子どもたち、目に入るとダメだといって目を閉じて走る子ども、体内の菌を殺そうと口を開けて飲んでいた子どもまで…
インターネットもなかった時代に、おなら車の登場は、それなりにビックイベントだったんだよね。
窓を閉めてという案内放送が流れても、むしろ「ちょうどいい。家の中も消毒してもらおう」と、時には窓を開けておいて室内の消毒もちょっとしてみたりもした。実際に効果があるのかは分からないけど(笑)
殺虫剤に軽油や灯油などの油を混ぜて、瞬間的に加熱し煙幕を噴霧する方式で、煙からは少し油の臭いがする。
広範囲を一度で、狭い隙間のような隅々まで薬剤を広げられるから、よく使われていた方式で、人が機械を背負って歩きながら消毒したり、オートバイや車両に乗せて移動消毒をするのだ。
主に初夏から、蚊やハエ、ダニなどの各種害虫を駆除を目的に行われていた。
殺虫効果を最大にするためその害虫たちの主な活動時間の夕方に集中的に実施されたから、夕ご飯を食べている子どもたちがついて行き、お母さんによく怒られた記憶がある。
1980年代後半まではよく見かけた “煙幕消毒車” は、最近ではあまり使われない。
殺虫範囲も思ったよりも広くなく、殺虫剤成分の人体有害性の危険や、環境汚染問題、騒音による住民からのクレーム、煙による視野問題での交通事故の可能性があるから、最近は油の代わりに水を混ぜて噴射する “煙霧方式” の消毒をするという。
水を使う煙霧方式の場合、噴射範囲は煙幕方式よりも狭いけど、消毒剤の粒子が大きく薬剤の効果も強いから、薬剤の効果が長持ちするそうだ。
過去に比べ害虫もかなり減り、ビニールハウスや果樹園が多い農業地域、川、水たまり、森の中などを主に防疫し、都心の場合、ゴミ捨て場の近くや貧困地域など集中して防疫をするようになった。
しかし古い住宅が集まっている庶民の地域や、“タルドンネ(달동네)” や半地下がある “ビラ村(빌라촌)” 、“市場地域” のようなところは、未だにちゃんと防疫活動をしなければならない所だ。
※タルドンネ(달동네):直訳すると月の町。主に山の近くにあって月が近かったり、月の高さ程、高い場所にある貧困地域のこと
※ビラ村(빌라촌):都心の中のアパートと一軒家の間の形態で主に2-5階くらいの多世帯の住宅をビラという。ビラにはほとんど半地下がある。
マンションが多い最近の韓国都心ではあまり見られない思い出の光景。
体を消毒するって?
消毒車以前には、体を直接消毒していた時代があった。
非衛生的な生活環境で、体にシラミとノミが住んでいて、様々な病気の原因になっていた時期。
当時は主に米軍が列をなして撒く白い”DDT“粉を全身に浴びながら、恥ずかしさも羞恥心もなく明るい時代だった。 何を、どうして撒くのかも知らずに浴びてたんだろうね。
シラミとノミは主に暖かくて暗い所が好きだそうだ。
だから人の頭にたくさん居住(?)していて、直接薬をかけたり、服にも多くて服を思いっきり叩いたり日光消毒したりしたのだ。
1980年代初め、学校で先生がある学生の頭に白い粉を振りかけてくれたのを思い出す。
あの時は幼かったから、「なんで僕にはやってくれないんだろう?」と思ったんだ。
昔の映画やドラマの中の貧しい家の場面を見ると、たまにお母さんが子どもたちの髪を変な櫛で髪をとかしてあげる場面が出てくるんだけど、頭の‟シラミ”を掴む場面だ。
韓国では「梳き櫛(참빗)」という名称の櫛で非常に細かく硬い材料の構造であるため、その間にシラミを引っ掛けて捕まえる。
最近はペット用に使うそうだ(一一”)
貧しかった頃の姿は消えつつあるが、似たような経験ができるところがある。
“ 軍隊 ”
軍人たちも普通は週末は休みなのに、必ず週末に大掃除や寝具類の日光消毒をさせて休ませない幹部たちが多かった。軍人たちが幹部たちを最も憎む瞬間。
「僕がお前たちを休むなって言ってるんじゃない。早く掃除して休んで。」
軍隊に行ってきた韓国人男性が一番嫌う言葉で有名だ。
奇跡の殺虫剤 DDT
そのように全身にばらまき、ノーベル医学賞ももたらし人類を救った「奇跡の殺虫剤 DDT」は、いつの間にか発がん物質になり、ほとんど使用禁止になった。
空腹でどうに食べていこうと撒いた農薬は、その土地と木にそのまま残り、数十年後には殺虫剤卵騒動の原因として登場する。 “残留農薬”
今や私たちはこれを思い出というが、地球人口の10%は依然としてマラリアと各種疾病に苦しんでいる。主にアフリカ地域の人々は2010年には70万人が死亡するほど非常に深刻で、1分に1人以上のアフリカの子どもが死亡するというスピードだが、最大の理由がDDT使用禁止による防疫の不備。
先進国の環境論者と動物保護論者の反対のため、約5倍から10倍ほど高い価格のDDT代替材を使わなければならず、防疫がまともにできていないということだ。
最近よく出ている炭素中立ニュースも同様に、先進国はすでにそれらのおかげで成長したにもかかわらず、他の国は使えなくする二重の姿を見せている。
先進国の“はしご蹴り”。
コロナ初期にワクチンが不足して死亡した貧困国の多くの死者を見て、もう一度悟った姿だ。
何が「公正」で「公平」なのだろうか?
先進国と後進国は当初から「スタートライン」が違っていたのではないだろうか。
映画『パラサイト』で、「線を越えてはいけない」というパク社長の言葉が、まるで私の頭の上ではしごを片付けようとする脅迫のように聞こえた理由だった。