スポンサーリンク

キム·ヨンラン法① 韓国の接待文化と3万ウォン以上の食事をしてはいけない理由

韓国文化と生活

ペコム
ペコム

韓国映画やドラマを見ていると、“食事代と3万ウォン” についての話が意外とよく出てくるけど、これは韓国で蔓延していた賄賂文化や不正請託文化と関係がある! 韓国では俳優ヒョンビンが出演していたドラマ『チング』のセリフがとても有名だけど、今回はこれについて紹介するよ!

おはる
おはる

あ、映画『チング』をペコムに勧められたけど残忍そうで見れなかったㅠㅠ ヒョンビンが出るならドラマ『チング』は観てみようかな(笑)

スポンサーリンク

너희 아버지 뭐하시노?(あなたのお父さん何してるの?)

映画『チング』

映画『チング』(2001)のポスター
出典:부산시보

歴代韓国映画の中で最高の名セリフが登場した映画の一つが、2001年に公開された映画『チング』だ。

釜山で幼い頃を一緒に過ごした友人が、互いに相手組織の組織暴力団となって立ち向かうことになるという内容で、未成年者観覧不可の映画なのに当時観客数800万人を突破するほど人気を博した韓国ノワールジャンル映画の象徴といえる映画だ。

映画の人気とともにいろんなセリフが韓国人の間で有名になったが、その中で一つが “너희 아버지 뭐하시노?(あなたのお父さん何(の職業)してるの?)” だった。

主人公たちの高校時代の教師が釜山弁で質問する言葉、“あなたのお父さん何してるの?”

ペコム
ペコム

男性には絶対オススメの映画(笑) 映画の紹介は次の機会にするよ~!

俳優ヒョンビン主演のリメイクドラマ『チング』(2009)のポスター
出典:서울신문

不良生徒たちを叱る前に教師が言うこのセリフには、当時の韓国文化が込められている。

あなたのお父さんが誰かによって私の態度は変わることがある” という意味だ。

2人の主人公の父親の職業は “葬儀屋” と “ごろつき” で、その答えを聞くやいなや、教師はつけていた時計を外して殴打をし始める。

映画の背景だった1980年代までも、韓国では保護者の職業によって生徒たちに対する差別が非常に激しく、自分の子どもを頼むために教師に賄賂を渡す “寸志文化(촌지 문화)” がとてもありふれた時期だった。

ペコム
ペコム

賄賂(寸志)ももらえなかったし、親の職業もろくでなしだから思う存分殴るんだよㅠㅠ

“너희 아버지 뭐하시노?”  (あなたのお父さん何してるの?)

寸志文化と先生の日

教師の生徒に対する過度な暴力と差別行為、そして、えこひいき。

韓国人の多くが学生時代に経験したシーンなので、このシーンのセリフはとても有名で、現在まではよくパロディーされるシーンの一つだ。

特に韓国では5月15日が “先生(師匠)の日(스승의 날)” で、その度に保護者は寸志(賄賂)や贈り物を準備するために悩まなければならず、教師の机にはさまざまな贈り物が積まれていた。

少なくともこの日に賄賂を渡さないと、その学生は一年中差別される。

そしてこの寸志文化を思い出す時、韓国の多くの学生が覚えている方法の一つが “” だった。

映画『師の恩(스승의 은혜)』(2006)で先生の日のプレゼントシーン(左)、現金入り封筒(右)
出典:씨네21시빅뉴스

担任の教師がある日突然、自分の両親に本のプレゼントをし、数日後に両親がその本をまた返してあげるように言うが、その本の間には現金や商品券が入っている封筒が挟まっている方式。

幼い頃にはそんなことだとも知らずに、自分の先生は本もプレゼントしてくれる良い先生だと勘違いしたりもㅠㅠ

軍事政権時代から始まった先生の日は、1990年代までも教師が賄賂を受け取る日と認識されていたため、これを防止するために2000年代初めには記念行事を省略したり、最初から生徒たちの登校を禁止させるなどの混乱に見舞われ、先生の日の廃止と復活が繰り返されてきた。

最近は現職教師たちが先生の日の廃止を大統領府の申聞鼓(国民請願)に要請するほど、教師たちも不便を感じる場合が多い。

ペコム
ペコム

暴力と賄賂があまりにも当たり前だった異常な時代を生きていたよ(笑)

先生の日廃止を要請するある現職教師の国民請願の画面(2018年、”先生の日を廃止してください”)
出典:국제뉴스

韓国で一番有名な法の名前

映画『エクストリーム・ジョブ』

映画『エクストリーム・ジョブ』(2019)日本と韓国のポスター比較
出典:다음뉴스

今までこんな味はなかった、これはカルビかチキンか” という狂ったセリフを大流行させた映画『エクストリーム・ジョブ』(2019)。

95億ウォンの安価な制作費で観客数1600万人を動員し、韓国映画歴代2位の観客数を記録した映画で、この映画もまたかなりおすすめ~!(笑)

この映画で見逃しがちな場面を1つ説明すると、主人公の刑事班長コ·サンギ(俳優リュ·スンリョン)の中学生の娘が学校で班長になったと自慢していたが、夫婦喧嘩中で父親と娘が逃げてくる場面だ。

家から追い出された父親と娘がチキンを食べるシーンで、娘は父親に班長をするには小遣いが必要だと要請する。このシーンに韓国で最も有名な法の名前が登場。

キム·ヨンラン法(김영란법) ”

ペコム
ペコム

キム·ヨンラン(金英蘭)は法制定を推進した当時の国民権益委員長の名前だよ。この名前を覚えておいてね~(笑)

父親と娘のキム·ヨンラン法の対話シーン
出典:이데일리뉴스

この時、娘のコ·イェジンは学校の学級委員になれば生徒たちにトッポッキも買わなければならず、学級費が足りなければ自分でなんとかしないといけないと言って父親に小遣いを要請する。

お父さんが財布から3万ウォンを取り出してくれると「たった3万ウォン?もっと使うよね?」と言うが、お父さんのコ·サンギは「キム·ヨンラン法というのがあり、公務員たちは3万ウォン以上取引ができない」と話す。

まさにこの法律がキム·ヨンラン法で、キム·ヨンラン法のキーポイントが3万ウォンだ。

韓国の国家公務員や教師や教授、ジャーナリストたちは3万ウォン以上の食事を提供してはいけないのがキム·ヨンラン法。

ペコム
ペコム

もちろん、映画でお父さんの言い訳は家族は該当事項ではないから嘘だけど(笑)

なぜ3万ウォンなのか?

キム・ヨンラン法の基本金額(食事3万ウォン、贈り物5万ウォン、慶弔費5万ウォン超過禁止)*2018年基準
出典:생활법령정보

韓国は数十年間、経済成長だけに集中していたので “パリパリ(早く早く)” と “便法利用文化” が蔓延していた。

法と規定から抜け出し、自分だけの不便事項を早く処理したり、規定に違反した例外的な恩恵を受けるためのこのような行動を防ぐために2012年国民権益委員長キム·ヨンランが提案した法が “キム·ヨンラン法” だ。

学校の寸志文化が当然と思われるほど、誰かに請託をしてお互いの便宜を図る文化が社会全般に敷かれていたのだ。

ペコム
ペコム

このような不正請託のために基本的に会う機会が必要で、会ってご飯やお酒を飲んだ後、プレゼントや賄賂を提供する順番だった。

映画『インサイダーズ 内部者たち』の性的接待シーン
出典:인사이트뉴스

2016年から施行されているこの法律の公式名称は “不正請託及び金品授受禁止法”だ。

国家公務員やジャーナリスト、教師や教授などの教職員が、職務関連性のない人から100万ウォン以上の金品接待を受ければ代価性がなくても無条件に刑事処分するということで、細部施行規定のため話題になった。

普通、「一度、食事しましょう~」で始まる不正請託の根源を絶つために食事や簡単な贈り物、慶弔費まで全て制限金額を置いて処罰するのだ。

2018年基準でキム·ヨンラン法の基本金額は食事3万ウォン、贈り物5万ウォン、慶弔費5万ウォン超過禁止が基本だ。

ペコム
ペコム

映画『エクストリーム・ジョブ』で父親が娘に小遣いを3万ウォンだけあげた理由(笑)

映画『インサイダーズ 内部者たち』

俳優イ·ビョンホンとチョ·スンウ主演の映画『インサイダーズ 内部者たち』
出典:팩트뉴스

これまで不正が摘発されても「代価性がなかった」、「知り合いだから貸したお金」と言い抜け出す人が多くて不正請託を証明するのが大変だったが、100万ウォン以上を受け取れば無条件処罰可能になったのだ。

それに韓国社会でよくあった “私たち同士”、“私たちの学校”、“私たちの故郷” などの人脈中心の不正を防ぐために、いわゆる “接待文化” と呼ばれる食事や飲み会の機会自体を遮断する効果だったのだ。

企業が高級料亭(食堂)やルームサロン(遊興酒場)で行われる接待行為にかかる費用だけでも毎年莫大だったため、経済のためにも必要だった法律だ。

ペコム
ペコム

日本も似ているけど、韓国映画にお酒や性接待シーンがたくさん出てくる理由ㅠㅠ

김영란법 풀어드립니다|③ 영화 속 장면, 이제는?
映画『インサイダーズ 内部者たち』でキム·ヨンラン法の場面 「僕が食べたのは僕が計算したから」
出典:jtbc뉴스

俳優イ·ビョンホンとチョ·スンウの名演技で有名だった映画『インサイダーズ 内部者たち』は韓国の政治家、ジャーナリスト、経済人たちの “정경언(政治・経済・言論)” の癒着関係をリアルに表現した名作映画だ。

だからこの映画にはこういう部分が詳しく出てくる。酒と女性接待、そして各種の不正。

その中で最も明確な状況がウ·ジャンフン検事(俳優チョ·スンウ)が不正請託をする記者に会って食事をしてから言う言葉だ。

내가 먹은 건 내가 계산했으니까, 너 나중에 다른 소리 하면 죽는다
僕が食べたのは僕が計算したから、 お前、後で違うことを言ったら死ぬよ

映画『インサイダーズ・内部者たち』 ウ·ジャンフン検事

それからウ・ジャンフン検事は食堂の領収書を取りまとめる几帳面さまで見せてくれる。

ペコム
ペコム

剛直な検事ということを見せる設定で、このすべてがキム·ヨンラン法を見せる場面だよ!

キム·ヨンラン法に基づき、制限金額20万ウォンの名節ギフトセット
出典:중앙일보

このように韓国社会は不正請託がよくあって、その問題を防ぐための法律が登場したため、この部分を表した場面が各種映画やドラマによく登場する。

この法律の制定に最も反対したのは、これまで請託の主な対象だった政治家やジャーナリストだったが、彼らは法律の正式名称である “不正請託及び金品授受禁止法” ではなく “キム·ヨンラン法” と卑下して呼び、多くが反対をしていた。

しかし、公務員と政治家、マスコミのパワハラに苦しめられた国民の絶対的な支持で、本当に苦労して作られたものだ。提案から4年でやっと国会を通過。

ペコム
ペコム

元々、法の名称に人の名前を付けるのは私たちが『ウ·ヨンウ』の解説記事(リンク)で学んだ英米法のスタイル~(笑)

国会通過当時、国民世論(よくやった64%、よくやった7.3%、分からない28.7%)と金英蘭(キム·ヨンラン)委員長
出典:리얼미터

2022年に新しく発足したユン・ソンニョル政府は、物価が上がったとして食事制限金額を5万ウォンに引き上げようとするが、国民は断固反対している立場だ。 社会の様々な分野とつながるものだから、たくさんの議論がある。

ペコム
ペコム

この法に関する詳しい内容とこれまでの過程、他の映画やドラマの場面をまた今度解説するね!今回は韓国のキム·ヨンラン法食事3万ウォン! これだけ覚えよう(笑)

タイトルとURLをコピーしました