ドラマ『D.P.』はシーズン2が制作されるほど韓国ではない国でも人気が高かったよ!でもその人気があまり広がらなかった意外な理由があったので残念なドラマでもある。このまま葬るにはもったいない作品だから、早めに復習してみよう!
『D.P.』だけは詳細な解説に自信を持っているというペコムの話もあるよ(笑)
『D.P.』はどんなドラマ?
脱走兵と追撃者
ドラマのタイトル “D.P.” は、脱走兵追跡(Deserter Pursuit)の略で、軍隊の警察役をする憲兵隊の職責名称だ。主に2人1組になって活動するため、DP組あるいは “脱走兵逮捕組”と呼ぶ。
実際に憲兵隊のDPとして軍服務をした作家による2014年11月から連載した人気ウェブトゥーン『D.P 犬の日』が原作だが、2014年···というと、韓国人には思い浮かぶ事件がある。
当ブログiumの兵役の記事1(リンク)で紹介した2つの事件、“ユン一等兵死亡事件” と “イム兵長銃乱射事件” で、韓国軍の過酷行為が社会的話題だったまさにその時だ。
この事件がドラマのメインテーマである理由ㅠㅠ
脱走兵を逮捕するために追撃する憲兵隊DPアン·ジュノとハン·ホヨルが体験するエピソードを通じて、各脱走兵の事情を紹介し、兵営不条理と矛盾を告発する内容だ。
軍隊に蔓延している殴打問題は基本で、いびきがひどいという理由で防毒マスクをつけて水を注ぐ、下半身裸でライターで陰毛を燃やす、強制的に自慰行為をさせる、顔に殺虫剤を撒くなど、韓国人男性なら直接・間接的に経験した内容だらけだった。
あまりにもリアルな考証のおかげで?数多くの韓国人男性にあの頃のトラウマを思い出させたし、子どもが軍服務中の両親は驚愕するしかなかったㅠㅠ
記憶のどこかに埋めておきたいあの “リアルさ” が話題になった本当の理由は、実際のような状況描写だけでなく、経験者なら誰もが共感せざるを得ない韓国軍隊に対する批判と主題意識のためだろう。
しかし、前の記事(リンク)で学んだよね? このような主題は韓国国防部の協力が得られないと(笑)
国防部の協力がなかったため、ドラマの中の軍隊生活館(内務班)など室内シーンはすべてセットで、野外撮影は閉鎖された(捨てられた)軍部隊を補修して撮影するため、制作費がかなりかかったそうだ。
Netflix兄さんたちの投資のおかげで可能だった作品だよ(笑)
私の話と人の話
2021年8月27日に『D.P.』が公開された後、韓国のオンラインコミュニティには「眠れなかった」、「PTSD(外傷後ストレス症候群)がぶり返したようだ」といった除隊者からの感想が殺到した。
二度と思い出したくなかった傷と記憶。
2022年の大統領選挙まで控えていたため、政界では軍隊関連の各種公約を出さなければならなかったほどで、以前の記事(リンク)のように国防部でも急いで公式立場を発表した。
軍隊を経験していない国民は「実際は、あそこまではないよね?」と質問している間、ほとんどの除隊者は「最近もそうなの?」「まさか、今はもうないよね?」と尋ねていた状況。
まさかと思ったことが依然として “現在進行形” であることを確認した時期だ。
『D.P.』は世界のNetflixランキング上位にランクインしたが、特に公開3日でアジア全体の国で10位圏に入るほど話題だった。
『賢い医師生活』を抜いて1位になった韓国のほか、タイ、ベトナムでも1位を記録し、その後台湾、香港、マレーシアなどでも1位になった。
ここで面白いのは1位に上がった国々の順番だ。“徴兵制を施行している国々” (笑)
徴兵制を施行しているタイとベトナム、シンガポールに続いて徴兵制を施行していた台湾やインドネシア、マレーシアの順で1位に上がったのだ。
文化圏が違うイスラエルやカタール、アラブ首長国連邦でも上位圏に入ったのを見ると、明らかな関連があるように見える。(徴兵制があったり、あった国々)
結局、“私” の話なのか、“他人” の話なのかによって共感の差が大きかったんだよね。
外国人がドラマ『D.P.』をよく知らない理由
世の中に存在する軍隊の “不条理文化” はみんな似ていたのだろうか?
逃げた軍人たちを追うもう1人の軍人の視線から眺めた韓国の不便な現実を扱ったドラマ『D.P.』は、2022年5月、第58回百想芸術大賞テレビ部門ドラマ作品賞を受賞した。
まさにこの部分に今、日本人の皆さんが、あるいは外国人がドラマ『D.P.』をよく知らなかったり、当時の人気を体感できない理由がある。
何の賞をもらったって? 作品賞!すごいでしょ? でも、1つ欠けているものがあるよね? 大賞!!
ドラマ『イカゲーム』が第58回百想芸術大賞TV部門大賞受賞作だった。
アメリカのエミー賞初の非英語圏受賞作で6冠王を獲得し、各種授賞式を席巻したドラマ『イカゲーム』がまさに2021年の作品。
問題は『イカゲーム』のNetflix公開日。2021年9月17日。
これまでの記事で『D.P.』の公開日である8月27日を強調し続けてきた理由がこのためだ。たったの20日違い(笑)
西洋でも順位が上がってきた時点でまさかの強敵の登場~!(笑)
軍隊内部を批判する重いテーマだったが、完成度の高い内容で徐々に口コミが広がった頃に、“強敵” の登場は反則だった(笑)
狂いそうなシンドロームを起こし、世界的なブームを巻き起こした『イカゲーム』のせいで『D.P.』の存在はあまりにも早く記憶から消えてしまった。
iumでシリーズとして扱った多くの兵役記事のように、韓国のアイドル歌手や有名人がなぜそんなに軍隊に行かないために不正まで犯さなければならなかったのか、
韓国の軍隊生活と文化について外国人に知らせることができる良い機会だと思ったのにとても残念だったㅠㅠ
韓国の軍隊では “列にうまく並ばなければならない” という言葉があるが、『D.P.』はその部分では失敗だったこと。
iumでドラマ『D.P.』を選んだ本当の理由
一番うまく列に並んだドラマは、『イカゲーム』直後に公開された 『マイネーム』と『地獄』だった。
『イカゲーム』の成功以後、韓国ドラマに対する期待感で予想よりずっと良い成績を収めたのだ。
だからといって『D.P.』が興行に失敗したドラマというわけではない。早くもシーズン2が確定し、上記の作品の中で一番先にシーズン2が公開されたから。
ただ、もっと多くの外国人に紹介したかった作品で残念だっただけ。
先端兵器と英雄が登場するハリウッド式軍隊の話ではないが、確かに違う魅力があるㅠㅠ
韓国を完全に理解するには、韓国のあらゆる分野の背景にある “北朝鮮” と “休戦”、“軍隊” を除いて話すことができないため、このブログでも最も気を遣っている部分だが、
このドラマをお勧めする一番大きな理由はペコムが憲兵隊出身だからだ(笑)
北朝鮮と向き合った最前線地域の憲兵隊で服務し、ペコムも二等兵の時DP候補だったから、誰よりもドラマに没頭するしかなかった(笑)
このパートだけは “実際に直接経験した” 生々しいレビューができるってば~!(笑)
頭に “憲兵(헌병)” と大きく書かれている特異な帽子をかぶり、腕には腕章もつけて派手な装飾の礼服を着ている軍人に象徴される憲兵隊は、実は日本式の名称で、2020年から “軍事警察” に変わった。
文字通り軍隊の警察と同じで、ドラマのDPのように脱走兵を捕まえる役割だけでなく、“営倉(영창)”と呼ぶ臨時保護所(監獄)の運営や管理、国軍刑務所の刑務官役、道路での交通警察役、不審者を検挙する検問所運営、高位幹部の警護活動やテロ対策任務を行う特殊任務隊まで様々な役割を果たしている。
最初は各々の役割を与えられるが、実際の部隊では人員が不足するため、色々な任務を同時に遂行する場合が多い。
両親や女性の場合は派手な礼服を着た会場の憲兵を格好良いからと、男性の場合は黒い対テロ服を着てレペルに乗る特殊任務隊に憧れることが多いが、
実際、憲兵の間で最も羨望の職務は無条件に “DP” だ。
憲兵たちもまた軍隊に連れて行かれたただの軍人なので、かっこいいとか強そうに見えるものは必要なく “部隊外の社会生活を頻繁にすることが出来る”ということ、これより重要なものはないのだ。(笑)
シーズン1の1話から同僚憲兵たちが主人公のアン·ジュノ二等兵がDPになったことを不満に思っている場面が繰り返し出てくる理由は “自分が夢見ていた職を新入の二等兵がすることになったから”。
すべての軍人にとって地獄のような部隊生活を1日でも減らせるということが大きな恩恵だㅠㅠ
それでこのドラマはアン·ジュノ二等兵が最初から嫌われる理由を知って視聴してこそ理解できるが、これは同僚部隊員の妬みや嫉妬かもしれないし、羨ましさかもしれない。
“私は大変な思いでこの中で苦労しているのに、あいつはどうして楽なんだ?” という思いを拭えないから。
その原因をアン·ジュノが作ったわけではないにもかかわらず、自分の意志や選択と関係なく憎しみといじめを受けるところ。
20代の青春である兵士同士がお互いを傷つけ、不満を抱くようになる場所がまさに軍隊なのだ。
“アン·ジュノ二等兵がDPになった” という文章一つだけでも、韓国軍の構造的問題点が始まるのだ。兵役義務のために強制的に連れてこられた数十万の軍人が皆公平ではないからだ。
そうしてドラマ『D.P.』は始まった。
誰よりもたくさん殴られたことがあると自信を持つ憲兵隊出身の立場から、ドラマ『D.P.』を復習するリアル解説で戻ってくるよ!(笑) 殴打防止部隊である憲兵隊ですごく叩かれたんだよ!!これってあり得る??トラウマが戻ってきてる(笑)