![ium [もっと知りたい韓国の話]](https://iumkorea.com/wp-content/uploads/2021/02/iumトップ画（横）-1-scaled.jpg)
国会、尹大統領弾劾案可決…憲政史上３人目の弾劾訴追賛成204人、反対85人…
12·3非常戒厳宣言から11日後、現職大統領に対する弾劾案可決は2004年盧武鉉前大統領、2016年朴槿恵前大統領に続き憲政史上３番目。
憲法裁判所が国会の弾劾訴追請求を引用すれば、尹大統領は朴槿恵前大統領に続き任期中に罷免される２番目の大統領として記録される。（後略）
ー2024年12月14日 韓国ニュースー
出典：네이버뉴스
12月３日の戒厳令が国会によって解除されて以降、韓国では早速、尹錫悦大統領の弾劾手続きに突入した。世の中が騒がしかった朴槿恵大統領の弾劾以来、８年ぶりに再び登場した単語 “弾劾”。韓国人でさえこのように頻繁に接することになるとは思わなかったこの単語がなぜまた登場したのか、大統領の弾劾はどんな意味なのかについて調べてみよう！決して「韓国人はデモ好きだから～」ってわけじゃないよ(笑)
弾劾って何？
日本と韓国の政治構造の違い
出典：네이버뉴스
弾劾(Impeachment)は、辞書的には ”過ちの実状を論じて責める“ という意味だそうだ。
法律的には、一般的な司法手続きや懲戒手続きによって訴追したり、懲戒しにくい高位公務員が職務上重大な不正を犯した場合、議会が訴追して処罰したり罷免する行為であり、その手続きのことをいう。
韓国の憲法には大統領・国務総理・行政府の長官・裁判官・監査院長などの高位職公務員が憲法や法律に違反したとき、国会は弾劾の訴追を議決できるとされている。
一般的な不正や犯罪行為よりは、高位公職者による憲法侵害から憲法を保護するための制度なので、憲法裁判所が管轄している。
誰が見てもこれは犯罪～みたいな単純な犯罪行為ではなく、法律に対する解釈や手続きの誤りなどで問題になった時に憲法裁判所の判決を受けると考えれば簡単だよ。今回の場合は “戒厳令が正常な手続きを経たのか、必要だったのか” が判断の核心だ。
出典：네이버뉴스
以前の朴槿恵（パク･クネ）大統領と今回の尹錫悦（ユン･ソンニョル）大統領の弾劾の過程をニュースで見守る日本人の立場では、この状況自体が理解できない人が多いだろう。
弾劾が必要なほど首相が過ちを犯したなら、内閣不信任決議を通じて首相をはじめとする内閣を交替すればいいし、もし不信任された首相が悔しかったら衆議院を解散して総選挙を再び行い、国民から選択されればいいのに「韓国はどうしてあんなにうるさいのか」という気がするからだ。
教科書的な説明では、大統領制は大統領が独立して定められた任期中に権力を行使するので安定的だが、しばしば政治的独善や葛藤が起こりやすく、議院内閣制は議会と内閣が協力するが、議会の信任を得られなければ内閣が自主解散することになるため相対的に不安定になりかねないという。 どの方式の方が良いのかの正解はない。
大統領制の方がより安定的だけど独裁に変質しかねないという部分は、韓国の軍事政権の時期を考えれば理解しやすいと思う(笑)
出典：네이버뉴스
日本と韓国の最大の違いは、国家最高権力者である大統領は国民が直接投票で選出した座なので、任期中は安定した国家運営ができるように多くの権力と力が集中しているということだ。
もちろん、その権力と力を誤って使えば独裁になり、憲法の基本的権利が制限されるので、大統領の権力と力を制限させる装置を作っておいたのが “弾劾” だ。
私たちが普段あまり感じられずに生きている “憲法の基本的権利” というのは思ったよりもかなり重要で、戒厳令の記事１(リンク)で解説したように、戒厳令が恐ろしい理由も、大統領の弾劾制度がある理由も全てこのためだ。
ほとんどの国の憲法では、人間の尊厳と自由を最優先している。自由じゃなければ死にそうだ～！
日本人には理解が難しい理由
出典：네이버뉴스
しかし相変らず日本人の立場で理解が難しいのは、
「大統領制の方がより安定的なんでしょう？それなのにどうして韓国は毎回騒がしいの？」という疑問、そして「議員内閣制は内閣が頻繁に解散して不安定だと？日本は内閣が解散してもそんなに騒がしくならないのに？」という経験があるからだろう。
教科書的な説明とは正反対の結果みたいだから(笑)
まず日本の場合、日本式の弾劾手続きである内閣不信任決議を通じて総理が辞退までしたのは1948年の一度だけで、戦時下だったためすでに忘れられていて、それ以降は衆議院解散は何度もあったが、ほとんどが大混乱なく終わったため、当然そう感じるはずだ。
この部分を日本人の立場では議院内閣制の短所さえもうまく運営している安定的な政治の国家だと思うわけで、外国人からすると政権が簡単に変わらない自分たちだけのおかしな政治構造だと考えている部分でもある。
出典：네이버뉴스
逆に韓国の場合は、軍事独裁という長い期間があったものの、これまで一度もなかった大統領が弾劾されるという状況がこの20年間で３回もあったので、何だか大混乱の時期だと思われても仕方ない。
この状況を海外ニュースで見守る外国人の立場では、私が内戦が起きているアフリカの名前も知らない国のニュースを見る心情と大きく変わらないだろう。「あの国はめちゃくちゃだな…(笑)」
当然、「大統領制は独裁が心配されるほど安定的だと？」という教科書的な説明に疑問を抱かざるを得ない。
そしてなんで３回？ 朴槿恵大統領は知っていたが、今回も合わせて２回じゃないの？と言う人たちは、それでも韓国という国に関心が高い人たちだ。
韓国初の大統領弾劾訴追の国会可決は2004年の盧武鉉（ノ･ムヒョン）大統領が初めてだった。しかし憲法裁判所で棄却されたため無効となったのだ。
大統領を弾劾する理由
大統領は、国会議員が決める議院内閣制の首相とはその難易度が非常に違うので、大統領になることも難しく、取り消すことも難しい。
一つの政党の大統領候補になるためには、まずその政党の国会議員の同意と支持を得なければならず、その後、数人の候補のうち、その政党を支持する党員（国民）が投票で参加する予備選挙という過程を経なければならない。
その過程を経てから、他の政党候補との本格的な競争が始まるわけで、国民全体の投票で選ばれるわけだ。そのような過程を経た人にだけ、さまざまな権力と力を与えることが出来るからだ。
問題は、一度もなかった大統領弾劾が20年間で３回…大混乱のこの時期は韓国人も知らなかった！が正解だよ(笑)
まさかまさかと思ったけど、朴槿恵がチェ·スンシルの操り人形だとは、尹錫悦がこれほど愚かなやつだとは韓国人も知らなかったよ(笑)
大統領がいくら愚かでおかしくても、ほとんどの先進国では基本的な行政システムが稼働し、国会議員と政党も存在しているので、任期中に大きな事故は発生しない。
アメリカのトランプ大統領を見れば理解しやすいだろう。
大統領一人によってアメリカという国自体はなかなか揺れないが、アメリカの国会乱入事件(2021)のように憲法を揺るがす大きな事件が起きた時は、アメリカでもトランプ大統領の弾劾手続きが行われた。
韓国では、これよりひどく８年間で２人も登場したというのが今の状況なんだ。これは韓国人たちも全然予想できなかったこと(笑)
大統領が国家の根本を揺さぶり、憲法を蹂躙（じゅうりん）する危急な状況であるため、彼らに与えられた権力を急いで取り戻し、無効化させる過程がまさに “弾劾” なのだ。
「なぜあなたたちが選んでおいてデモして、うるさい～」ではなく、自分が選んだからその権力を再び取り戻さなければならないのも自分の責任なのだ。
なぜ投票を２回したのだろうか？
出典：네이버뉴스
戒厳令の解除でも同じだったが、与えられた権力と職位を回収する過程もまた、民主的な手続きと憲法に従わなければならないので、難しいが様々な過程が必要だ。
その１つ目が、12月14日のニュースの国会での弾劾訴追案の議決。
韓国の国会議員は計300人で、そのうち⅔の200人以上の国会議員が賛成すれば、大統領の弾劾手続きが始まる。
普通の法律は過半数の150人以上であれば通過する基準が多く、弾劾のように憲法と関連した重要な投票の場合には⅔以上が必要だが、
多党制国家で、ある一つの政党がこの数字を占めることは非常に難しいので、重要な案件であるほど多くの党の意見が合致してこそ通過が可能な構造なのだ。
現在、韓国は政権党（与党）の「国民の力」を除いた野党の総議席が192議席の状況だったので、大統領と同じ側の与党議員8人以上が協力してくれなければ通過できない状況だった。
しかし、大統領の所属政党である「国民の力」では、大統領が弾劾されると次期大統領は期待できないので、なんとか弾劾を阻止しようと、12月4日の１回目の投票には全員出席しなかった。
108人の与党国会議員のうち、志のあるたった３人の議員だけが投票に参加したため、定足数200人に達せず、投票自体が無効になった。
それから翌週、野党が再び弾劾訴追案を発議し、新たに投票をしたのが12月14日の２回目の投票だ。
「先週無効だと言っていたようだが、またやるの？」、「今週の投票は何？」という状況になった理由(一一”)
出典：네이버뉴스
一次投票の場面を生中継で見守った多くの韓国人は与党「国民の力」の行動に怒りを表した。
国民を代表する国会議員らしく、所属政党のために反対するなら投票で示せということだ。民主主義の手続きそのものを無効にする行為はありえないということ。
一次投票日の翌日、韓国の新聞の一面には投票に参加しなかった「国民の力」名簿が載せられ、“内乱同調者たち” というタイトルがついたり、国会議員たちの事務室に抗議電話をしたり、謹弔花輪を送ったり、直接訪問してデモをしたりした。
投票日当日までも投票参加について党の方針を決められなかった「国民の力」は結局全員参加し、弾劾賛成204、反対85、無効8、棄権3という結果で、尹錫悦大統領の弾劾案が可決された。
この日の韓国人の関心は、まず「国民の力」議員が投票に参加するかどうかだった。反対票は理解出来ても、また参加しなかったら本当に大きなデモが起こったはずだよ(笑)
出典：네이버뉴스
韓国の大統領弾劾の過程
今回の弾劾訴追決議案の通過は、大統領を罷免するための手続きの開始点に過ぎない。
これからの全ては憲法裁判所だけの権限なので、行政府である政府も、立法府である国会も、司法府である裁判所や検察まで、誰も関与できない。
韓国の場合、国会での決議案が通過すれば、直ちに大統領の職務は停止され、国家元首が持っていた権限はすべて国務総理に渡ることになっている。国務総理が大統領の代行業務をすることになるのだ。
憲法裁判所では最長180日以内に判決を下すことになっていて、その判決の結果によって大統領が最終的に弾劾されたら60日以内に新しい大統領を選ぶ選挙をするというスケジュール。
もちろん弾劾の理由がなくて棄却されれば直ちにすべての業務の復帰が可能だ。
規定通りなら最大８ヵ月間は大統領の不在という行政空白が生じる可能性があるため、できるだけ早く判決を下す傾向だ。
出典：네이버뉴스
盧武鉉大統領の時は２ヶ月、朴槿恵大統領の時は３ヶ月で判決が出たが、盧武鉉大統領は弾劾が棄却され業務に直ちに復帰し、あの有名な朴槿恵大統領は弾劾が決定し罷免された。
それで今回の判決も早ければ２ヶ月、遅くても３ヶ月以内と予想している。
朴槿恵大統領の場合、弾劾の理由があまりにも広範囲で、関わっていた対象者も非常に多かったので、捜査が終わっていない状態だった。
そして大統領の無責任や無能力のような “行動に対する解釈” をどうするかによって変わる事案が多かったにもかかわらず３ヶ月で判決が出たので、この状況を根拠に予想されている。
朴槿恵大統領弾劾の出発点になった荒唐無稽な事件は大学入試の不正問題だったけど、このブログの入試問題の記事（リンク）を読んでみるとよく分かって面白いよ(笑)
このように憲法裁判所の判決は、弾劾の理由によって証人出席や弁論、調査などの回数が期間に影響を及ぼすが、
今回の尹錫悦大統領の場合は、法をよく知らない国民も、法をよく知っている法律家たちも、みんな声を揃えて “内乱罪” と “国家反逆罪” と主張しているほど明らかな部分が多いので、むしろもっと早いかもしれないと予想したりもする。
それほど、12月３日の戒厳令は法的な手続きでも、憲法の観点の名分でも問題が多く、尹錫悦大統領の自殺行為とされている。
今もなお韓国人の疑問は「いったいなぜ？」「この時代にクーデターが成功すると思ったの？」
泥酔説や精神異常説まで湧き上がっている尹錫悦大統領の判断の推測は、別の記事で扱うよ！
韓国人にとってはとても痛快で忘れられない憲法裁判官の判決を聞きながら今日は締めくくるよ。「主文、被請求人の大統領、朴槿恵を罷免する」
