前の記事を通じて韓国映画やドラマの中の “軍隊物語” の様々な背景知識を解説したよ!ここからはドラマ『D.P.』に登場する “実際の韓国軍隊文化” を説明するよ!知っておくと楽しさが2倍~!どんどん理解できるよ~!
実際の憲兵隊体験談を早く聞かせて~気になるって(笑)
『D.P.』シーズン1を簡単におさらい
主な配役とキャスティング
脱走兵を追う陸軍憲兵隊二等兵アン·ジュノ(俳優チョン·ヘイン)と上等兵ハン·ホヨル(俳優ク·ギョファン)、そして憲兵隊軍務離脱担当官パク·ボムグ(俳優キム·ソンギュン)と新しく赴任した補佐官大尉イム·ジソプ(俳優ソン·ソック)が作品の主要人物だ。
格別な観察力とボクシングをしていた独特な履歴の主人公アン·ジュノは、現実から逃げるように入隊した後、憲兵になって脱走兵を追跡しながら軍務離脱逮捕組(D.P.)に成長していく人物で、以前の出演作の柔らかさの代わりに強い役で戻ってきた。
ハン·ジュンヒ監督は俳優チョン·ヘインの “融通が利かなさそうな顔” が好きでキャスティングしたそうだが、実際のドラマでの役柄とぴったり合って面白い(笑)
実際、軍隊でアン・ジュノみたいに融通が利かないと周りの人たちがすごく疲れる(笑)
俳優のク·ギョファンは軍人らしくない外見と言葉遣い、ずうずうしい性格のDP組の組長ハン·ホヨル上等兵役を演じたが、ギャグが多くて頼りなく見えても、脱走兵を捕まえる時には誰よりも本気だ。
7~8年の付き合いというハン·ジュンヒ監督は、ユーモラスな彼の性格をよく知っているためキャスティングしたというが、ドラマ『D.P.』最高のキャスティングではないかと思う。
終始真剣で重くならざるを得ないテーマのドラマを、はるかに軽くて楽しめるようになったからだ。
ハン·ホヨル上等兵役で第58回百想芸術大賞テレビ部門男子新人演技賞を受賞し、最近急成長している俳優だ。
ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』で子ども解放軍総司令官 “バン・グポン” で特別出演したよ(笑)
DP組活動の心強い支援軍になってくれる軍部離脱担当官パク·ボムグ中佐役の俳優キム·ソンギュンも、圧倒的な存在感を発揮した。
特に職業軍人である下士官特有のいつも疲れていてやつれた表情、普段は無気力で無能に見えるが緊急状況では誰よりもベテランらしいフォースが出てくる下士官の演技がリアルすぎて、韓国の男性たちに大好評を得た。
パク·ボムグ中佐と対立して緊張感を醸し出した新しく赴任した将校イム·ジソプ大尉役俳優ソン·ソックも好評を博したが、将校たち特有の自信がにじみ出る鋭い目つきと原理原則を問い詰める傲慢な言葉遣いまで、実際の軍隊の将校みたいだという評価が多かった。
階級は将校が高いけど下士官の方が経歴が長い場合が多くて、実際にもよく衝突する(笑)
主要役の4人とも最近認知度が急上昇中だが、特にイム·ジソプ大尉役ソン·ソックの場合、ドラマ『サバイバー: 60日間の大統領』(2019)に続き『D.P.』でも印象的な演技を披露し一気に主演級俳優に成長した。
シーズン1ではハン·ジュンヒ監督の前作に出演した縁で短く特別出演したが、以後、ドラマ『私の解放日誌』(2022)と映画『犯罪都市 THE ROUNDUP』(2022)に主演級で超高速成長し、『D.P.』シーズン2ではソン·ソックの日程によって撮影スケジュールを調整しなければならないほど一番ホットな俳優になってしまった。
ロマンスや犯罪物、ギャグ物まで多様な役割を上手にこなし、韓国映画界の “第2のイ·ビョンホン” として期待されている人物だ! 俳優ソン·ソックの名前を覚えておこう!
スキップボタン1分に込められたもの
大韓民国国民である男性は、憲法と同法の定めるところにより兵役義務を誠実に遂行しなければならない
大韓民国兵役法第3条1項
シーズン1の第1話、いきなり登場する韓国兵役法の字幕。このドラマの毎回は “兵役法3条1項” が明示されて始まる。
まさにこの文章一つからすべてが始まり、この文章によって韓国で生まれた男性たちは軍隊に行かなければならなかった。
もちろん、それより前の原因には朝鮮戦争があり、その後には北朝鮮の誕生があるのだが。
これが合憲だって? これが正当な法だと?を叫んだ韓国の男たちの多くの恨みが込められている法律だ(笑)
ドラマ公開後、“超ハイパーリアリズム” という評価を受けた『D.P.』は、始まりから韓国の男性たちの胸をほじくり抜いた。
兵役法の字幕が消えるやいなや始まるドラマのオープニング映像。1分間の映像に収められた “韓国人男性の一生”。
習慣的にオープニングスキップボタンを押していたら見逃すその映像には、生まれたばかりの赤ちゃんが1歳の誕生日パーティー(トルチャンチ)を迎え、幼稚園のお遊戯会や小学校、中高校時代を経て、愛と未来を苦悩する青年になり、皆同じ短髪で訓練所に集まって家族と別れるその場面。
スキップボタンを押そうとして思わず「あ…」と嘆声が出たㅠㅠ
ある男性の成長が軍隊という地点に向かって走っていくこの映像は、まるで “トラウマのボタン” を押したようで、韓国の男性たちにその時その記憶を再び蘇させる役割を果たしている。
除隊後、ぼやけていたその記憶が再び再生されるだろうという警告文のようだった。
オープニングだけ見ても涙が出たり、最高のオープニングだと賛辞を受けた理由は、まさに私が、そしてあなたと私たち皆が歩んできた人生がそのまま盛り込まれているからだろう。
とても印象的な1分間の超短編映画のようだった。
入隊に対する恐怖心と悲しみが最高潮に達した訓練所入所の日、家族と別れた場面がまだとても生々しいㅠㅠ
ビデオカメラの撮影感を生かしたこの映像は、実際に一般人が所有しているものをもらい受けて制作したという。
入営式を待ちながら列に並んだ青年たちの中に、後ろを振り返ったアン·ジュノの目がクローズアップされて終わるが、今後私たちはアン·ジュノの視線を通じて韓国軍内部の姿と脱走に対する話に出会うことになるだろう。
法と規定を破った脱走兵であることは明らかだが、彼らが “なぜ脱走したのか” について重点を置いているこのドラマは、単に軍隊の不条理文化に対する告発が目的ではないことをポスター文句で明確にしている。
“ 彼らを連れて来い 無事に ”
国民に兵役法に基づく入隊の義務があるとすれば、国家には彼らを無事家族に帰さなければならない義務もなければならないのだから。
『D.P.』に盛り込まれたリアル軍隊文化①
アン·ジュノが覚えなければならなかったこと
最初の場面でファン·ジャンス兵長がアン·ジュノ二等兵に尋ねるのは部隊員の名前だ。
新入が来ると、普通、新人が属する小隊(40人あまり)や中隊員(160人あまり)の名前と階級を覚えさせる。自分と生活する同僚部隊員が誰なのかは知っていろという意味だ。
良い意図ではあるが、問題は自分が属している内務班(分隊)の人員10人余りを除けば、ほとんどの部隊員に会っていない状態なので顔が分からないということ。
顔も知らない状態で紙に書かれた名前と階級を覚えなければならないんだ。
その次の難関は同じ階級にも入隊日によって順番があるから誰が上級者で誰が同期なのかも知らなければならない(笑)
一般の歩兵部隊の場合は規模が大きく人員が多いため、他中隊員の場合は “おじさん(아저씨)” と呼ぶほど遭遇することはない。
憲兵のアン·ジュノは訓練所で5週間の基本訓練を受けた後、“ 陸軍総合行政学校 ”というところで憲兵の追加教育を2~3週間受けたはずだ。
この過程を英語でEBC(Enlisted Basic Course、私兵基礎クラス履修)と呼ぶため、ドラマのセリフ中にEBC 1038期、1041期のような用語が登場する。
だから何月に入隊した軍番で、憲兵教育は何期なのか、階級が何なのかまで覚えなければならなかったのだ。
歴史書の中の人物100人余りの年齢順を覚えると思えば似ている(笑)
『D.P.』ポスターの中の認識票の意味
普通1~2週間以内に全部覚えろと言うが、先任兵たちはそれが不可能だということを知っている。
しかし、これを覚えるスピードで新入兵士の資質や姿勢を評価できるので、ファン·ジャンス兵長のような人にとっては後任兵を苦しめるための良い言い訳にもなるのだ。
一般部隊は同月入隊した場合、同期で計算し、憲兵は1、2週間ごとにいる憲兵教育騎手によって同期で計算することが多い。
入隊順に各自に軍番が付与され、IDタグ(認識票)というアルミネックレスが支給されるが、常に首にかけていなければならない。
認識票にはそれぞれの名前と軍番、血液型が刻まれていて、軍番は入隊した年度から始まる10桁の数字になっている。“23-12345678” のような形式。(前の2桁が入隊年度)
軍人はいつどこでも怪我をしたり死亡したりすることがあるので、輸血のための血液型が表示されていて、戦争中に死亡した場合、遺体を運んだり見つけられない場合が多いので認識票だけでも回収する方式で利用する。
だから1つのIDタグに2つの同じ認識表がついている構造なんだ。
戦時中に死亡した場合、認識票の1つは家族に送り、もう1つは国防部に送る方式ㅠㅠ
今年アカデミー映画祭4冠王受賞作だったNetflix映画『西部戦線異常なし』(2022)には、ドイツ軍が数百、数千個の認識票を袋に集めた後、死亡者書類を作る場面が出てくる。
軍人認識票の使い方をよく見せてくれた作品ㅠㅠ
だから時々ニュースに出てくる北朝鮮との武力衝突があった場合、軍人たちが一番先に手にするのがまさにドッグタグと認識票だ。
『D.P.』 シーズン1、2のポスターにIDタグと認識票が登場するのがどういう意味なのか、今は分かるよね? 家に帰れなかった誰かの息子たちㅠㅠ
オープニング(イントロ)映像とポスターの意味まで大まかに調べてみたけど、まだ1話の5分も進んでないよ(笑)
それでもドラマの全体的な雰囲気はより詳しく把握できると信じて、次は韓国軍人が最も多く使う “軍人の言葉と軍隊の話し方” について紹介する予定。
除隊して久しい今も大学の学番は覚えてなくても軍番は覚えている(笑) これもトラウマだよ~国家に洗脳された~(笑)