前回の記事で紹介したように韓国は現在”休戦“中の国だよ。いつ戦争がまた始まるか分からないから、今も数多くの青年たちが軍隊にいるが、日常生活の中でも備えていなければならない。それで誕生したのが “民防衛訓練” だよ。どんなものなのか詳しくみてみよう。
民防衛エピソード
上の写真は、韓国で “民防衛訓練” で検索した時に出てくる1番有名な写真だ。民防衛訓練の感じをよく表現している写真というか…(笑)
坡州臨津閣に観光に来たある外国人の驚いた表情で、韓国人たちはしばらく笑った。訓練状況であることを知らない外国人の立場では、実際に戦争が勃発したと勘違いする恐れがあるからだ。
驚きと心配でいっぱいのこの表情(笑) この方が驚くしかない理由が、この場所が北朝鮮の目の前に見える“臨津閣(イムジンカク)”というのが問題だった(笑)
外国人が多く訪れるバーガーキング(ハンバーガー専門店)で民防衛訓練サイレンが聞こえた時の、上のチャットのエピソードもとても有名だ。
バーガーキングで民防衛訓練のサイレンの音が聞こえると、外国人2人が驚いて「オーマイガー」と叫んで驚いていたので、ある韓国人が「リラックス」という英単語が思い浮かばなくて「ウォーウォーウォー」と落ち着かせてあげたら、外国人たちがもっと慌てて大騒ぎになったという内容。
*ウォーウォー(워~워~):人を落ち着かせる時に使う擬声語で、主に人よりも馬を落ち着かせる時によく使う韓国語表現。「落ち着いて~大丈夫~」という意味で使う。
*外国人が理解した韓国人の説明:war~war~(戦争~戦争~:発音が韓国語と同じ)
韓国を訪問した外国人なら、少なくとも北朝鮮との関係は基本的に知っているはずだから、突然サイレンが聞こえたら戸惑うしかないだろう。日本で聞く地震警報のように…
このような写真やエピソードが出るようになったのは結局、韓国の状況に対する理解度の差。
外国人の立場では「北朝鮮」、「ミサイル」、「核兵器」、「金正恩」のニュースはたくさん見たが、戦争はもちろん休戦状況もほとんど経験したことがないからだ。
シリーズ①で解説したように、戦争中と見るには平和だし、休戦と見るにはあまりにも多くの北朝鮮の挑発のせいでもっと混乱するよ(笑)
民防衛を区分する1:民防衛制度
戦争と挑発の両方に備えるために国家的に準備するのが“民防衛(CivilDefense)”だ。
民防衛:敵国の侵略や天災地変により人命と財産に受ける被害を最小限に防ぐため、民間人によって実施される非軍事的国土防衛
たくさん混乱する部分があるが、民防衛制度と民防衛訓練を区分しなければならない。
韓国人が普通“民防衛”と言うのは主に、民防衛制度によって義務期間を満たさなければならないシステムをいう場合がほとんどで(韓国成人男子のほとんどが民防衛に含まれているので)、外国人が“韓国の民防衛”と言うのは主に、民防衛制度の中で毎年実施される民防衛訓練(避難訓練)をいう場合がほとんどだ。
韓国の民防衛は1975年に創設され、現在まで施行中であり、2018年12月基準で約362万人が該当する。
満20歳になる年の1月1日から満40歳になる年の12月31日まで軍服務を終えた(予備軍まで含めて終えた)男性が民防衛召集の対象で、兵役免除(身体等級6級)の判定を受けた男性のみ免除。
満20歳から満40歳まですべての韓国の男性は自動的に”民防衛”に編成されるという話だよ。戦争が勃発すれば45歳まで延長され、戦況が悪化すれば50歳に延長できるという恐ろしい制度(笑) 私が50歳を超えるまで平和は必ず必要だよ~(笑)
韓国の一般的な男性の20代からの人生を見てみると、
20代初めに現役兵として入隊し、2年程度の(現在の時点で陸軍と海兵は18ヶ月、海軍は20ヶ月、空軍は21ヶ月)の服務期間を終えて除隊すれば、すぐに予備軍に転換される。
予備軍は除隊後8年目まで履行しなければならないが、普通1~4年目の間は動員訓練と言って軍部隊に入所して1年に数日間の訓練を受ける。
その後、大学卒業後、除隊5~6年目には主に射撃訓練程度の4時間程度の訓練を受けたが、最近は5~8年目までは非常連絡網の確認程度だけしているそうだ。
その間に就職をして職場に通いながら、残りの予備軍期間を満たせば、30歳頃からはすぐに“民防衛” に編成され、1~2年目までは1年に集合教育1回4時間、3~4年目までは1年にオンライン教育2時間、5年目から満40歳までは1年にオンライン教育1時間だけを受ける。
集合教育は普通、地方自治体所属の民防衛教育場に出て1年に4時間の応急措置、労災防止教育、化学生物安全対策教育などを受けなければならず、以後は本来毎年1日の招集訓練(朝集まって出席チェックだけする)を受けなければならなかったが、最近は全てオンライン教育に変わった。
予備軍と民防衛が似ているようにみえるが、民間人の身分の民防衛の場合、不参加の場合は10万ウォンの過料(前科記録が残る罰金ではない)が賦課されるが、予備軍所属で動員訓練不参加の場合は刑事立件、罰金30万ウォン(前科記録が残る)と強制性で大きな差がある。
召集期間中、軍人の身分となる予備軍訓練とは違って、民防衛訓練は民間レベルで行われる訓練なので軍服も必要ないが、たまに予備軍服を着て参加する人たちは笑いの対象になったりもする(笑)
自然災害や大きな事故が起きた場合にも国家的災難なので民防衛に該当し、だからニュースを見ると偉い方が黄色の民防衛ジャンパーを着て登場する姿をよく見ることができる。
韓国民防衛の場合、薄黄色のジャンパーが民防衛服だよ。
一般隊員には実際の状況時にだけ配るので、普段は実務者と訓練に参加する公務員および軍務員だけがユニフォームを着て活動する。
日本の政治家たちも水害や地震の時みたいにユニフォームを着てニュースに出るのを見たことがあるよ。
民防衛を区分する2:民防衛訓練
上で説明した民防衛隊員の招集とは別に、北朝鮮の攻撃や災難状況に備えて、全国家的に行われる訓練もある。
そもそも公式には毎月15日、年8回(1、2、7、12月を除く)が民防衛の日として14時から約20分間警戒空襲警報が鳴り、民防衛避難訓練を行うべきだが、最近は年に1~3回だけ訓練を行っている。
訓練が始まれば、全てのラジオ放送が通常の放送を中断して訓練実況放送をし、地上の公共交通は全て止めなければならない。(地下鉄除外、旅客列車は時々停止させる場合もある。)
一般車両も道路の右側に停車して動くことができず、移動中の市民はみんな近くの避難所に避難しなければならない。(普通は近くの建物に入って待機)
“ 韓国のすべてが止まる時間 ”
まさにその時間が来たんだ。
道路にある車両は原則的にすべて道端に停車しなければならず、高速道路と自動車専用道路の場合は状況によって通行させる場合もある。
韓国に観光に来て民防衛訓練がある日なら、ロッテワールドのような遊園地も民防衛避難訓練中はすべての乗り物が20分間止まるから、15日の14時はちゃんと覚えておかなければいけない(笑)
野外で行われるスポーツ競技も一時中断されるため、サッカーや野球の観覧も時間が遅延される。
韓国プロ野球の場合、13時か14時に試合を始める場合が多くて、韓国に初めて来た外国人選手たちがサイレンの音に戸惑う姿もしばしば見られる(笑)
予備軍も民防衛も韓国の “休戦” 状況が長くなるにつれ、国民の不便に対する不満が積もっていったため、持続的に日程と規模が縮小されている現実だ。
今では韓国人も年間8回の訓練日程をほとんど気にしていないので、ある日警報サイレンが鳴ったら日付を見て15日前後だけど、14時だったら民防衛だと気づくくらいの傾向にある(笑)
避難所の避難もほとんどせず、ただ近くの建物の入り口にしばらく立って待機する程度で、移動する車両の場合は忙しいと統制要員とケンカすることもよく見られる。
そのため、移動統制時間の場合、本来の15分から2016年からは5分に減ったほどだ。
映画『彼とわたしの漂流日記』のレビュー記事で紹介した “彼女が自由になる時間” が今は5分に減ったのだ。
1980年代まではサイレンが鳴ると、日本の地震避難訓練のように授業中に机の下に伏せて隠れたり地下室に避難したりする訓練までしていたが、最近の学校はそのまま授業を進める場合が多い。
最近は韓国でも徐々に増加している地震に備えた訓練を兼ねて行うこともあるが、これも形式だけで行う場合がほとんど。
それでも政府庁舎など公共機関ではそれさえもまともにする方で、民防衛放送が構内放送で生中継され職員たちが実際に待避訓練をする。そして主要企業や国家重要施設などでは軍人や警察、消防士が動員され、実際の状況に備えた訓練をする方だ。
私が幼い頃は夜間にすべての電気を消してカーテンで覆う灯火管制訓練もしたことを考えると世の中が大きく変わったのだ。
もはや安保よりは経済と便宜が優先になってしまった世の中。
もちろんこの変化が無条件に悪いわけではないと思うが、たびたび発生する北朝鮮の挑発を見れば無条件廃止しなければならないと言うのも難しい現実だ。
すべてを戦線にいる軍人だけに任せて “休戦” 状況を楽しむには、一般人はあまりにも備えが足りないのではないかと思う時も多いからだ。
現役軍人たちの服務期間から予備軍、民防衛と民防衛訓練まで全ての期間が短くなり、回数も減っている。
減らずに増えるのは、北朝鮮のミサイル発射回数だけ。
訓練の必要と不要、効果と非效率、維持と廃止を簡単に論じることができないほど、北朝鮮は依然として狂っている。
訓練は面倒でも安保意識だけは必ず必要な韓国の状況だ。
最近のヨーロッパ内の戦争を見ても、 “誰も私たちを代わりに守ってくれないから”