今、Netflixの話題作『ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え』(2022)。そのドラマに出てくるちょっと不気味な仮面。気になった方いませんか?今日はそのお面について紹介するよ!
河回タル(ハフェタル/하회탈)
Netflixドラマ『ペーパーハウスコリア』のメインに登場する白い仮面をよく見ると、目じりが下がり、口元が大きくほころんでいる。
韓国の有名な伝統仮面劇の仮面 “河回タル(ハフェタル/하회탈)” だ。
河回タルは、韓国の慶尚道の安東(アンドン/안동)という地域の河回(ハフェ/하회)村の、仮面(タル/탈)という意味で、韓国では一番有名な仮面だ。河回村+仮面
韓国では “カミョン(가면/仮面)” よりは “タル(탈/仮面)” とよく呼ぶが、これは過去に朝鮮半島がモンゴル(元)の干渉期を何度も経験したためと見られる。モンゴル語でタル(tal)は片面(side)の意味とともに顔という意味でも使われるそうだ。
多くの韓国人が“タル(仮面)”は、純粋な韓国語で”カミョン(仮面)”は漢字語で認識している場合が多いが、仮面踊りで使われる木素材の立体的な仮面を主に仮面で呼び、紙で平らに作られたものは仮面で呼ぶ傾向があるようだ。
河回タルは韓国の国宝第121号に登録されている国の重要文化財だ。
河回タルには最初、12種類の仮面が存在したそうだが、現在は9種類の仮面が実際に残っていて、残りの3つの仮面が、最近日本や韓国で発見されたこともあるが、まだ検証されていない。
韓国語 | 読み方 | 意味 |
백정탈 | ペクチョンタル | 百丁(男) |
부네탈 | ブネタル | 若い婦人(女) |
이매탈 | イメタル | 馬鹿(男) |
초랭이탈 | チョレンイタル | 召使い(男) |
중탈 | ジュンタル | 僧(男) |
양반탈 | ヤンバンタル | 両班(男) |
할미탈 | ハルミタル | 老婆(女) |
선비탈 | ソンビタル | 学者(男) |
각시탈 | カクシタル | 閣氏=新妻(女) |
주지탈 | ジュジタル | 動物 |
河回タルは12種類の全体を呼ぶ名称で、種類によってそれぞれの役割と細部名称があるが、仮面踊り(タルチュム)から社会風刺や批判をしなければならないのが主な目的なので、両班と士人、男性と女性、僧侶と白丁まで各階層によって多様に区分されている。
ドラマ『ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え』で登場する仮面は、河回タルの中でも一番有名な “ヤンバンタル(両班の役割をする時に使う仮面)” だよ!
河回タルの特徴の1つが、役者がセリフを言うと、実際のあごの部分が動く二重構造になっているので、1つの表情が固定された他の仮面より躍動感を与え、様々な表情を作り出すことができる。
しかし、女性の仮面であるブネタル、ハルミタル、カクシタルと男性の下僕のチョレンイタルは顎が分離しない構造で、タルチュムでもほとんどセリフがなかったり、ごく少ないのは、当時の社会的地位を表している部分だ。 男女差別と身分による言論の自由が許されなかった時代像を反映している。
その中で特異なのは、顎の部分が全くない構造の“イメタル(이매탈)”という仮面だ。
男であることは確かだが、身分の高い人を作るために二重構造にしようとしたが、未完成なのか、それとも元々あごの部分はない中間者の役割をするための構造なのかが分からない。
この仮面を最初に作ったとされる高麗時代のホ氏が、あごの部分を作っている時に亡くなったためだと伝えられているが、あごの部分がないため、仮面踊りの役者たちの口がよく見えて完成度の高い未完成品とも呼ばれている。
カクシタル
多分日本の韓国ドラマのファンの中にはこれと似たような形の仮面を見た人がいるかもしれない。 Netflixドラマ『カクシタル2012』。
日本による植民地時代の抗日運動を扱ったドラマだが、韓国のNetflixにはなく、日本のNetflixにはあって韓国で話題になったドラマだ。
タイトルから“カクシタル(河回タルのうち女性の仮面)”で河回タルがメインで登場するドラマだが、韓国人には下の画像で有名だ。
旭日旗を破る場面が痛快だからではなく、下記のような当時の日本のニコ動のファンの反応のおかげで韓国人に有名になった画像だ。
日本人1:このバカたちよ、このドラマは日本を攻撃するドラマだ!観たらダメ!
日本人2:私はそんなの知らない~ジュウォンさん(男性俳優)かっこいい~~♥
実はこのドラマは韓国のトップスター7人が相次いで出演を拒否し、キャスティング段階から険しかったドラマだった。
理由は当時、韓流熱風の中心だった日本ファンたちを失うのではないかと思った俳優たちが顔色を伺ったからだったが、快く受け入れた2人の俳優はむしろ韓国より日本でもっと人気が高くなるという変な結果となった。
抗日運動をする男性主人公があえて河回タルの中で女性の仮面を使った理由は、カクシタルが元々単純に「女性」ではなく、村を守る童神、あるいは賢神の役割だったそうだ。村の「守護神」で意味を拡大し、祖国を守るイメージとして使ったのだ。
この上の写真の左の仮面をよく見ると、両目の形が少し違うようになっているが、これはわざと顔の両側の表情が違うように作られたものだそうだ。
おとなしく見えるように見下ろす目と正面を凝視する2種類の目で不平等な世の中に対する抵抗の姿を見せているカクシタルの“両面性”は、ヒロインを愛する純粋青年イ·ガントと祖国のために命を投げかける英雄イ·ガントの2つの内面を象徴する仮面であるため、よく似合っていたという評価がある。
そこに元祖カクシタルはその時代に沈黙を強要された女性だから沈黙の仮面をそのまま使わず、前述のイメタルのように下の部分をなくして日本の強圧に沈黙しないという強い意志の表現だという解説を見た。
このように、それぞれの仮面には歴史と意味があるからドラマ『ペーパーハウスコリア』で河回タルを選んだのは少なくとも韓国ではとても好評だったんだ。
次は『ペーパーハウスコリア』で登場した2番目の仮面について紹介するよ!
カクシタルの説明を探す前までは、単純に適当に作ったので目が違うと思ってたけど、下の部分は俳優の顔が見えないからじゃないかと今も疑っている(笑)
おまけ★河回タルで有名な韓国の芸能人
色んな種類がある河回タルの中でも、“両班(ヤンバン)タル”が河回タルだと思っている人が多いほど、両班タルが有名で、実は韓国にはこの両班タルに似ている芸能人がいる。
“하회탈 연예인” (河回タル 芸能人)と韓国の代表検索サイトのネイバーで検索すると、この人の写真が沢山出てくるよ(笑)
お笑い芸人とMCで活躍中のナム・ヒソク(남희석)さん!韓国では河回タル=ナム・ヒソクというくらい有名なお笑い芸人だよ(笑)