【パラサイト】#8 江南と塾│ギウの最低賃金│焼酎一杯

映画で学ぶ韓国の歴史・社会

韓国の塾と家庭教師、江南

江南と「大峙洞」の誕生

別名「ノワール」だった韓国映画のポスターが男性主人公1人が消え…

男女の恋愛「ロマンスもの」のポスターに変身し話題となった

映画「江南1970」の日本版ポスター。

この映画は1970年のソウル、

江南(강남:カンナム)」の不動産開発が始まった時期の、政治ヤクザに関する映画です。

「漢江の南側」の地域を指すこの単語が、

時間がたち、「江南不敗」、「江南不動産神話」と呼ばれるようになるとは

1970年代、誰が想像したでしょうか?

その不敗の神話、江南のど真ん中に「大峙洞(대동)」があります。

大峙洞塾街(대치동 학원가)

2021年現在も大韓民国の熱い学習熱があふれる私教育の伝説、

塾街の伝説は江南の誕生と一緒に歩んできました。

戦後20年、朴正煕大統領の主導の経済計画が実行された当時、

大韓民国の首都、ソウルは飽和状態に達します。

明確には、今のソウル駅と景福宮を中心とした「江北(カンボク강북)」の地域でした。

朝鮮の建国、そして漢陽に都が移ってから、500年も首都だったので十分あり得ます。

これにより、北側に集中していた首都ソウルをバランスよく発展させるため

漢江の南側への分散と拡張を計画します。

江北の旧都心1角都市から、江南の2角を追加した三角形の形の3角都市。

西側には、「汝矣島(여의도:ヨイド)」の商業地区、東側の「江南」には金融業務地区

そうやって指定された地域が今の「江南」です。

田んぼと畑だけあって、漢江が氾濫しよく浸水していたソウルの東南地域。

もちろん交通も遅れていて、貧民層が住んでいた地域でした。

戦後、100万人だったソウルの人口がすでに300万人にまで増加した1960年代半ばから、

経済計画は実行され、

1969年12月、「第3漢江大橋」が架橋、

1970年7月、ソウルと釜山をつなぐ「京釜高速道路」が完工し

本格的な江南開発の歴史が始まります。

1970年、ソウルの人口はすでに540万人。

1年間で60万人も増加するほどソウルの成長は爆発的で、江南の開発はとても重要な政策課題でした。

限られた国土の中で密集された人口をうまく解決するため

大きな団地「アパート」はとても効率的な方法でした。

ペコム
ペコム

ちなみに、江南の中でも古~いアパート団地があるんですが、これはこの頃に建てられた団地です。今ではほとんどが再開発の対象で、見た目はボロですが、価格はめちゃくちゃ高いです。

政府は今も急いでいる時はいつも「公務員」から強制に移住させ始めます。

もちろん始めは「自主的」にでしたが、反応はとても薄かったです。

田畑の真ん中の江南のアパートに自分から引っ越す人は、あんまりいないでしょう。

それで、多くの公務員たちが「半強制」的に移住させられます。

それでも未だに弱い基盤施設がネックなのか、うまく進まず、

70年代の始めのオイルショックによる経済恐慌まで…

そうやって政府はもう「強制」的に移住させます。

1975年

漢江以北の地域宅地開発禁止措置(한강 이북지역 택지개발 금지조치)

やっぱり熱いです!私たちの独裁者(笑)

さらに…

人口が多く集まる百貨店、市場、大学などなど…

政府:全部江南に来い~!それでも来ない?じゃあ…

ソウル市庁、大法院、検察庁、調達庁、山林庁、韓国銀行本店、他の大手銀行の本店などなど、各種公企業の移転を行い…

国民:職場のために行こうとしても子どもたちの学業が問題で…

政府:そんな言い訳が通用すると思う?

と、1976年に韓国最初の名門「京畿高校」の移転を始めとし、江北の有名な名門学校たちが移転し始めました。

この時、移ってきた15校の名門学校が江南に集中し、

まさに現代韓国の「8学群(팔학군)」が誕生することになるのです。

ペコム
ペコム

8学群(팔학군)とは、江南区と瑞草区に位置する高校の集まりのことを意味します。8学群という単語が一般化してきて、今では優秀な学校のことを意味することもあります。

「ありえない家の価格!ありえない授業料!何もかも想像以上!」

今の江南区、瑞草区に集まったこの名門学校たちにより、

現代の韓国の教育は、住宅は、経済は、巨大な対価を払うことになります。

地下と半地下が分かれるように

江南にも8学群、そのなかでも私たちは違う!

大峙洞(대치동)

塾街の誕生は、こんな風に

誰が金一成で誰が朴正煕なのか、

どっちが韓国でどっちが北朝鮮か分からない、

そんな時代にこうやって生まれました。

幸いなことに韓国が民主主義の国だったので、

1976年に発表された官公所の移転は、法的な問題でほとんどが取り消しになり、

それでも国家的な約束を守るため、10年後になってやっと移転したのが、

今の大法院と大検察庁です。

おはる
おはる

ありえない土地代の江南のど真ん中に何であんなでかい官公所があるの?

ペコム
ペコム

順序が変わっちゃいましたが、当時の政府には全部「計画」があったんです。

政府も江南の土地を持つ金持ち(笑)

おかげで私たちはニュースで、

各界の高位層の江南の人たちがすぐに検察に連れていかれるのを見ることが出来ます。

朴槿恵、李明博、2人の大統領も家が江南でした。

大統領も欲しがる場所、江南。

ドラマ「SKYキャッスル」は実話だった?!韓国の教育熱

江南と大峙洞は最初から有名だったわけではありません。

 いわゆる「SKY(スカイ)」と呼ばれる韓国の名門大学進学のためには

「江南8学群」の名門高校に行かなければならず、

この学校は居住地と居住期間によって割り当てられるため、

子どもたちの住所だけ残して家を登録する「偽造編入」が大流行しました。 

ペコム
ペコム

SKY(スカイ)というのは、韓国最難関の名門校である、ソウル大学(S)、高麗(コリョ)大学(K)、延世(ヨンセ)大学(Y)の頭文字をとった単語です。

この大学を出た人は、韓国での社会的地位や就職にも大きなプラスとなることが多いです。

ひとつの住所に、名前も姓も異なる何人かの学生たちが住んでいて、

とんでもない風景も繰り広げられたんです。

家を実際に移せれるくらいならすでにお金持ちで、

住所だけでも移そうとすれば それもお金が必要で…

それなりにお金持ちの彼らは

「8学群」内部の競争に打ち勝つため

「高額家庭教師」というアイテムを見つけ出し、 

大学生家庭教師、名門大学生家庭教師、前職が教師の家庭教師、現役教師の家庭教師、

大学教授家庭教師、名門塾の講師家庭教師、試験出題委員まで… 

まるで進化の起源を見つけたように、家庭教師として出来る全ての段階の発展と不法行為を犯しました。

結局、一般の市民たちや政府も堪忍袋の緒が切れ、

 

1980年 全斗煥大統領の時に

家庭教師全面禁止(과외금지조치)

という厳しい対応をします。

もちろん、それで綺麗さっぱりなくなれば、今日の大峙洞はないでしょう。

 彼らは簡単には諦めません。

1980年代には

隠れて家庭教師をする「007家庭教師(007과외)」や「家庭教師部屋(과외방)」が登場し、

高校平準化(고교 평준화)」を通して加熱しすぎた教育熱を冷まそうとした政府の願いとは反対に、学校で勉強が足りないから勉強が必要だと、1990年代半ばまでの「私教育ブーム」を巻き起こし…

ひとつ、ふたつとまた大峙洞に集まり

今回は色々な塾の進化を見せてくれました。

過去20年あまりの蓄積された「8学群」の成果がデータとして加わると

もう壊れることはない「不敗の鉄の城」が構築され始めます。

 「最強ボス大峙洞」はそうやって誕生しました。

夜の10時、11時、12時。

広い道路の両側にずらっと並ぶ送り迎えの塾のバスと親の車。

2、3車線を埋めて待機しているその光景を見ていると、

本当に呆れて言葉が出ない苦しさを感じます。

2000年代には教育の選択権を制限するという理由で違憲判決を受け、

ギウとダヘのような家庭教師は復活し、 

「江南の塾+高額家庭教師」の組み合わせで終わることを望んでいたこの旅は、

2018年にドラマ「SKYキャッスル」が放送された時、

ほとんどの国民は「えーあれはやりすぎでしょー」という程の 「彼らだけの世界」は私たちの「世界」と離れていることを再確認させてくれました。

出典:JTBC

良い学校、良い塾と先生、金持ちの親、財力では足りず、

良い 「入試コンサルティング」まで必要という話。

中学生基礎「相談」1時間に2-30万ウォン、

高校生は「相談」1時間で数百万ウォンまでし、

大学入試の自己紹介書とアドバイスを受けたら

1件で何百万ウォンから何千万ウォンがかかるというニュースたち。

1年で何千万ウォン、何億ウォン…

医大や名門大学は3億も惜しくないという人達。

朝5時から子どもの塾の席の確保のために代わりに並ぶ親たち。

それを代わりに並んでくれる時給2万ウォンのアルバイト。

多様な子どもたちの環境と特性に合わせて選ぶという意図の入試制度は

複雑で多様な入試の規定や情報の格差を生み出し、

その格差と制度の複雑性は、

今ではニュースを1回見ただけでは理解も出来ないレベルまで変わってしまいました。

ギテクのように最初から何も考えない方がマシかもと思ったりも… T_T

朝方に娘の塾のいい席取りをするため、4人の家族が出てきて

両親とお兄さんまで塾ごとに分かれて列に並んでいるインタビューを見た時、

お金がなかった悲しみよりも、もっと大きな悲しみを感じたあの日。

一体子どもにどんな「教育」をしたいのか…

最近の子どもたちが本当に可哀そうで悲しくなりました。

塾に行けないキジョンと高額家庭教師を受けるダヘが一緒にいて

「カフェ型読書室」、「プレミアム読書室」まで登場するソウルの「教育熱」の話。

ソウルの救援投手として登場した「江南」がソウルを救援したけど、

韓国を壊している今日の「江南2021」。

おはる
おはる

映画の中で「お金持ちの家で家庭教師をする」というストーリーは、ポンジュノ監督自身が学生時代に家庭教師として富裕層の家に通った経験に基づいたものだそう!

ギウの計画

547年

「 547年 」

悲喜劇とよばれるジャンルを開拓したポンジュノ監督には

最初から「悲劇」だったのかもしれません。

근본적인 대책이 생겼습니다 .이 집부터 사겠습니다.

根本的な対策が出来ました。この家から買います。

映画「パラサイト」中

映画後半部、ギウが家を買うのに必要な時間…「547年」

ポン・テール(봉테일:ポンジュノ+ディテール/ポンジュノ監督はディテールまでこだわることからついた名前)」らしく、監督が予め計算してみたら、最低賃金基準で547年くらいかかるそうです。

そしたらこれはあまりにも残酷な結末ですT_T

夢も希望も抱けないようなこの時間を再検証した記事によると、

映画の中にパク社長の家は本物の住宅ではなくセットですが、

1階の建物の面積だけで200坪と土地が550坪だったといいます。

設定上似たようなソウルで高い土地の平倉洞の相場を考えると

現在の基準で100億~200億ウォンの間です。

2020年韓国の最低時給は「8,590ウォン」

これを法定勤務時間を基準とし計算してみると最低月給は約180万ウォン。

最低年俸は約2,160万ウォン。

計算の便宜上、2,200万ウォンで考えた時、

547年かかるとされ、パク社長の家はだいたい「120億ウォン」で推測すれば、計算が一致します。

120億ウォン」、「547年

1ウォンも使えず全額貯金しないといけない可哀そうなギウのために

記者はギウの年俸全額を韓国の平均年利率2%の積み立てをかけてあげて、

これを魔法の「福利元利金」として計算をしたら、

547年だったら「57兆ウォン」集めることができ、

「120億ウォン」ごときは125年あれば十分だといいます。

福利のマジック!ですね~

そしたら、あとはギテクとギウの寿命さえ伸びれば実現可能でしょうか?

ポンジュノ監督くらい残忍なこの記事は

「不動産も時間が経てば価格が上がる」という理由で、韓国の平均年3%の不動産収益率だけ適用すれば120億ウォンのこの家の価格は547年後に「157,780兆ウォン」になるそう。

「兆ウォン」、「兆」ですよ!!

宇宙が消える時まで

名前が「ギウ」である全ての韓国人が子どもの世代まで全て集めても不可能な金額なのに

547年はポンジュノ監督があまりにも「希望の拷問」をしているといいます。

現実世界の「貧富の格差の加速度」をよく知らないでいるんです。

記者がもっと残忍です…;_;

韓国の最低賃金

OECD基準が出ればいつでも上位圏を占めていた韓国の「欲」は

「最低賃金」と「勤労時間」でも同じで、

最低賃金の場合、いつも5本の指を争う下位圏で、

勤労時間は毎年メキシコと1位を争う超上位圏国家です。

ペコム
ペコム

いつでも中間がない韓国。

熱い国でしょ?(笑)

最近何年「ライフワークバランス」ブームと合わせて勤労環境が早く改善されていますが、

最低賃金6,000ウォン台がわずか3年前の韓国の現実です。

文在寅大統領の「2020年最低賃金10,000ウォン」の選挙公約は

2020年の目標値に到達できなかったので、

公約失敗に対して、国民に謝罪をしなければなりませんでした。

10,000ウォンに向かうこの3年間の最低賃金の上昇は

今ではついに日本と同じ水準まで到達しましたが、

雇用主と自営業者たちのものすごい反発で今年は速度を調節している最中です。

おはる
おはる

韓国の最低賃金は、今では日本と同じくらいになりましたが、

日本もOECD上位圏ではありません。私たちは友達(笑)!

遠い道のりです…。

いつ10,000ウォンになるのか分からない現実の中、

実はギウは正解を知っていました。

돈을 아주 많이 버는거에요.

お金をめちゃくちゃ稼ぐんですよ。

映画「パラサイト」中

「最低賃金」は言葉通り「最低」というだけで

「最高」賃金になってしまったおかしな世の中。

お金をめちゃくちゃ稼がない限り、その格差は縮めることができません。

犯罪を犯さなければいけないでしょうか?一攫千金狙わないといけないでしょうか?

「23.64年」

中小企業平均所得勤労者の、ソウル平均中小型アパートを買うまでにかかる期間だそうです。

中間の中間の中間である「平均」の生活をしようとしても、

それすら厳しい今のソウル、そして韓国。

「平均」は本当に難しいことが今になって分かりました。

ギウは新しい計画を立てます。

勉強して、成功して豊かになって豪邸を買って、地下室に閉じ込められた父親を救う。

しかし、この計画も実現できそうではありません…。

焼酎1杯

韓国人だったら、ほとんど聞けなかっただろう歌

焼酎一杯(소주한잔)” 

映画が終わって、1分後に最初の歌詞が出てくるので、聞くことが難しい歌。

ポンジュノ監督が作詞してギウが歌った歌です。

なんとアカデミー映画祭の主題歌賞にノミネートされましたが、

韓国人の99.9%は存在すら全く知らないその歌。

韓国では「빨리빨리(パリパリ:早く早く)」文化のせいなのか、

エンディングをゆっくり鑑賞することはかなり難しいです^^;

座って観れるけど、すでに出ていく人たちがいるので、簡単な環境ではありません。

最近、唯一の経験といえば、

ほとんどの観客が最後まで座って見た映画「1987」じゃないかと思います。

2時間超えて我慢していた涙を終わらせた最後の1分

その時の劇場の厳粛な雰囲気は、長く記憶に残りそうです。

同じように2時間超えで集中して観た観客たちのために

ポンジュノ監督が準備した歌「焼酎1杯」はそういう意味ではちょっと惜しいです。

「ギウの声がもうちょっと早く流れていたら…」

もし聞いていたら、本当に監督の意図のように、私も「焼酎1杯」飲んでいたんじゃないかな。

2時間の喜悲劇を終えたら、気分が良くないだろうと、

軽く楽しい気持ちで始まったけど、その終わりは決して軽い足取りではないだろうと、

そういう観客のために「焼酎1杯」を入れたかった監督。

いろんな感情が交じり合う時、

普通は1人で焼酎1杯したくなるんじゃないか、

映画の余韻を味わってもらえばという監督の言葉のように、

明らかに気分が軽い結末ではありませんでした。

消化が出来てないのに焼き芋を無理やり食べた気分というか…

監督の言葉通り、帰り道に屋台で焼酎1杯が思い浮かぶけど、

財布のことを考えると今では屋台も簡単ではない現実。

庶民の象徴でもある屋台はいつの間にか、ドラマでのおなじみの風景となってしまい…

 サービスで出ていた熱いおでんのお汁、ケチャップをたっぷりの分厚い卵焼き、

ないとさみしい辛い鶏の足と肉炒め、

粘り強くコリコリ「砂ずり」にごま油をかけて焼酎1杯…。

かなり少なくなった屋台の数より、

かなり高くなったおつまみの値段よりも悲しいのは、

各自の人生を歩むうち、財布の差が広がり、

思い出の人気メニューを一緒に囲めなくなった友達、そして時間。

今日も1人で注いで飲む、「焼酎1杯」。

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